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『触れた怒り』
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刹が俺と話すときの雰囲気が変わった気がした。
あえてそれを聞くことはしない。
だってそういうの一番嫌うから。
「なんか、懐かしい感じ、だったなぁ。」
「家?」
「うん。俺あんまりあそこにいたって記憶はないんだけど、なんでだろ?」
刹は一瞬何かを言いたげに口を開いたが言葉を発することはなかった。
「家着いたら夜だよ。
がっつり緋色兄さんに怒られる。」
「刹がいるから大丈夫!」
と、思っていたけど
ドアをあけたらそれはもう素晴らしいお顔の仏様が…あれ?デジャヴ?
「おかえり。」
その仏様の隣から式がひょっこり顔を出し俺の首筋で
くんくんと鼻を鳴らした。
「なんかいい匂い…」
「あぁ、これかな。お土産。」
刹が雪都さんから貰ったお土産を差し出すと
嬉しそうに式が受け取った。
その隣をついていこうと靴を脱いだら
「どこへいってて連絡が取れなかったのかな」
すごく低音ボイスが頭上に響いた。
「ちょっとお買い物?」
ちらりと緋色が刹を伺えば
刹も静かに頷いた。
「随分と質のいい紅茶を飲んで来たようだね。」
俺にだけ聞こえるか聞こえないかの声で囁いたあと
緋色は自室の方向へと向かった。
「レイ?着替えてくるよ。
緋色兄さん何も言ってこないなんて今日は疲れてるのかな。」
いや、違う。
……………緋色は怒ってる。
それはいつもよりはっきりと
感じ取れた
珍しい緋色の怒りという感情だった。
その日
緋色は俺のことを一度も見なかった。
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