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《那月》
破れた風船。
壊れたクマ。
ゲームコーナーでくま見た時、何とも言えない気持ちがした。
僕がもらったくまは風船だったから、いずれは萎んじゃうけど。
それでも家に連れて帰って、一緒に居たかった。
萎んだら、ありがとうって言いたかった。
だって初めてだったんだ。
人から物をもらった事。
だからゴミ箱に捨てるって言って、壊れた風船持ち帰った。
家に帰ったら、ありがとうって言って大事に引き出しの中にしまうんだ。
でも大丈夫。
守谷さんいるし、ソフトクリームも美味しかったし。
だから大丈夫。
なのに守谷さん、ストップって……なんで?
「ちょっとやっていく。
那月もやるか?」
「あ、いいえ。」
ゲームなんてやった事ないし。
僕はトロいからすぐゲームオーバーになっちゃうし。
「そうか?
じゃ待っててな?」
後戻りをして、クマのぬいぐるみのある所で止まった。
「コイツはクレーンゲームって言うんだ。
昔良くやったけどな。」
お金を入れて、ボタンを押す。
「あ、あ、……!」
くまがちょっとだけ動いた。
「後二回あるから。
良いんだよ、これで。」
後、二回?
また、ちょっとだけ動いた。
「よし、取るぞ?」
クレーンが動いて……クマが穴に落ちた!!
「腕は鈍ってなかったな。」
守谷さんが満足そうに、笑った。
クマを取り出して僕に渡す。
え??
「これ……?」
「腕が鈍ってなかったか確かめたかったんだ。
もう満足だ。
それはやるよ。」
「えっ!!もらえません!」
「俺が持ってても気色悪い。
そうかー、そしたら捨てるかー。」
守谷さんが取り返そうとしたから、慌てて胸に抱き締めた。
「捨てるなんて、そんな事ダメです!!」
「じゃ、持って帰ってくれよな?」
守谷さんが笑って言った。
「さ、行くぞ。」
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