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信じたいと思うもの
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ーーリン……
『おれは……先生みたいに、強くなれない……』
『オトは、強くなりたいのかい?』
『だって……強ければ、不幸な自分も受け容れることが出来るでしょ。
不幸を幸せに変えることも』
『そうか……そうだね。
だったら、君は、嘘をつくしかないよ』
『嘘を……?』
『変わりたいと思って、変わることはとても難しいことだ。
まずは嘘をついて、弱い自分を隠すこと。
自分が強い者であるかのように振る舞うこと』
『そんなことして、いいの?
弱いところも受け止められるのが、強さなんじゃないの?』
『弱い部分を認めてあげるのが強さなら、まずはそれだけ強くならなきゃならないだろう?』
『……そっか』
『己のことを強いと思い込むこと。
理想の自分を演じることで、己に自信を付けること。己のことを好きになってあげること。
そうしてやっと、ほんの少しだけ強くなれるんだ』
『……面倒くさいんだね、強くなるのって』
『はは、そうだね。
だからね、無理して強くなる必要はないんじゃないかな』
『そんなの、ずるくない?』
『ずるいか、そうか。
強い者は、弱い者に惹かれるものなんだけどね』
『え?』
『それにぼくは、弱さを受け容れられることが強さだとは思わない。
弱い者でも、自分自身の弱さを大切に抱えて生きている者もいる。
肝心なのは、強いか弱いかではなく、どんな風に自分と付き合っていくかってことなんじゃないかな』
『……そう、なのかな』
『どうだろうね。
これはあくまでもぼくの考えで、もちろん、君には君の考えがある。
君が信じたいと思うものを、信じればいいと思うな』
『……信じたいと、思うもの……』
リン……
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