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クロッカス
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僕は今、人として最低なことをしている。
僕の独り善がりなわがままで、やってはいけないことをしている。
薬で人の心を操って、自分の欲求を満たしている。
1日しか効かないものだけど、少しでもいいからあの人からの愛が欲しかった。
街中で人気のあの人と嫌われものの僕。
薬でも使わないと愛されることなんて絶対にない。
「ルーク、考え事なんてどうしたんだい?具合でも悪い?」
「ううん、大丈夫。」
1日だけ。
1日だけでいいから貴方をちょうだい。
1日だけの愛。
思い出作りに1番行ってみたかった場所に行った。
この国で1番大きい遊園地。
観覧車の1番上で告白をするとこの先別れることなく一生一緒にいられる。
そんな本当かどうかも分からない迷信に望みをかけてきた。
あわよくば薬が切れても一緒にいられるように。
初めての遊園地デートはとても楽しいものだった。
誰かに愛されるということはこんなにも幸せなことだったのかと泣きたくなった。
ルーク、と優しい声で名前を呼ばれる度に、胸がいっぱいになった。
「最後に観覧車に乗って帰ろう。」
薬の効き目は後1時間半。
観覧車は20分。
ここの観覧車は人気だからそろそろ並ばないと乗れないかもしれない。
幸せそうなカップルが並ぶ列に並ぶのは申し訳なさで溢れた。
ここに並んでいる人達は、ちゃんと勇気をだして告白して付き合った人達。
それなのに僕は、薬なんか使って卑怯な手でこの人と一緒にいる。
カタビス様ごめんなさい。
1時間と30分だけ。
その間だけは僕だけのものでいて。
40分ほどして乗れた観覧車は緊張で胸がいっぱいだった。
「ルークはどうしてそんなに緊張してるの?」
カタビス様の声がじわじわと頭に入ってきたけど、緊張しすぎて何も答えられなかった。
「もしかして、迷信を気にしてるの?この観覧車の頂上で告白すると別れない。」
もう少しで頂上。
緊張で口の中がかわいてきた。
あともう少し──
「ルーク、好きだよ。」
時が、心臓が止まったのかと思った。
カタビス様が僕に好きと言った。
薬のせいで言った言葉だったとしても喜んでしまっていた。
もしかしたらずっと一緒にいられるかもしれないと、希望を持ってしまった。
でも、その後すぐに後悔が押し寄せた。
カタビス様の気持ちを操ってごめんなさい。
好きでもないやつに好きだと言わせてしまってごめんなさい。
最低な自分が隣にいてごめんなさい。
あっという間の半周。
薬の効果はあと30分。
迷信が迷信でなかったとしても、こんな僕にカタビス様を付き合わせたくなった。
念の為にと持ってきていた、特定の人物の記憶だけを消す薬。
カタビス様の飲み物に混ぜて渡した。
ひと口、ふた口と体内に入っていく様子に涙が溢れた。
これから徐々に僕のことを忘れて行くのだろう。
全て自分のせいだとしても、好きな人にこれから忘れられるという事実に耐えられなかった。
「カタビス様ごめんなさい……大好きです。」
そう言い、脇目も振らずに逃げ出した。
誰かを好きになるのがこんなにも辛いのなら、もう恋なんかしないと心に決めた。
さようなら、僕の初恋。
さようなら、僕の大好きな人。
クロッカス
愛の後悔
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