アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
・
-
「そ、うだね…」
『うん…コーヒー飲む?』
「うん…」
このままじゃ駄目だ。
このままじゃ…
でも先生は…もう…っ…
いや…諦めたら駄目だ。
まだ始まったばかり…まだ引き返せる。
俺が生み出してしまったのなら、俺が責任を持って戻さなきゃ。
「先生…」
『んー?』
「……俺が今死にたいって言ったらどうする?」
先生の動きが止まった…
振り返らず、ただ目の前を見つめている…
前の先生だったらきっと…きっと…
『じゃあ…死のうか。…って言うかな。』
「……。」
違う…
こんなの先生じゃ無い。
この人は誰なんだ…
「先生……変わったね…」
『そうかな…』
「前の先生だったらそんな事言わなかったよ…」
『………。』
「俺が死にたいって思えば、先生は止めてくれてた。一緒に生きようって言ってくれてた筈だ……けど、今の先生は違う…」
その時、先生の持っていたカップが手から離れ…床に鋭い音を立てて砕け散った。
破片が飛んできて、俺の足に傷を作った…
それでも先生は動かない。
「…っ……今の先生も凄く好き…でも、昔の先生が俺は良い……今更何を言ってるんだって思われても良い…それでも…それでもっ」
『今更怖じ気付いたのか?』
気がつけば先生は目の前にいた…
その目は何も映していない。
怖い…直感的にそう思ってしまった…
「そうじゃなくてっ…」
『じゃあどうして急にそんな事を言った?』
「……っ…」
迫ってくる先生…
ここで逃げる素振りなんてしたら…先生を否定することになる。
なのに…身体が勝手に後ろへと下がる…
怖い…
『…………っ…ごめん…怖がらせたかったわけじゃないんだ。』
優しく先生は俺を抱き締めてくれた。
いつもの優しい力加減で…
「先生……ごめんなさい…俺が居る変なこと言ったから…」
『ううん…勇間のせいじゃ無い…ごめんな…ごめん…』
「………先生、これから俺達どうなる?離れたりなんかしないよね?」
『うん、絶対しない。それは大丈夫だ…全部が落ち着いたら…二人で遠くに行ってやり直そうか。』
頭を優しく撫で、額にキスを落とした先生…
その目にはちゃんと俺が映っている。
良かった…ちゃんと先生だ…俺の…
『さっき足切ったよな…?』
「あ、うん…でも大丈夫です…ちょっとなので。」
『それでもちゃんと手当しなきゃだろ…ほら、ここ座って。』
「うん…」
促されるまま、近くの椅子に座る。
先生は購買に買いに出てってしまった…
気が付けば外は雨だった。
「………。」
さっきまで晴れていたのに…
なんだか胸騒ぎがする。
先生…
俺達…大丈夫だよね?
先生は…大丈夫だよね…?
『よし、これで良いかな。』
「ありがとうございます。」
『じゃあ俺一応学校に顔出さなきゃだから…』
「はい、気を付けて…」
『ん。またよるに来るから……っと忘れ物。』
そういった先生は俺にキスをした。
触れるだけの…それでいて満たされるキスを…
『早く家に帰っておいで…』
「うん…。」
ゆっくりと閉まるドア…
先生の姿が見えるまで俺は見届けた。
きっと大丈夫…
だって先生はもとに戻ったんだから…
優しくて…慈悲深い先生に。
早く家に帰って、先生との時間を堪能したい…
嗚呼…先生……好きだよ。
「………。」
隠し持っていたカップの破片を取り出す…
それをそのまま腕に運び、押し付ける。
陶器って意外と切れ味良いのかな…なんて思いながら力を込めて横に引いた。
プツプツと血が溢れる…
久し振りの感覚…
流れ出る血液を舐め取ると、口の中に鉄の香りが広がる。
唾液が染み込み、ピリピリとした痛みが体に響く…
「………。」
俺は先生のもの…
先生は俺のもの…
愛おしい条約。
破られることの無い条約。
「ふふふ……」
この血も先生のもの…
俺だけが与えられるもの…
赤い赤い果汁…
「あはははっ…」
これで先生はもう俺から離れられない。
叶先生すらももう…離せないね…
優しい先生…
それでいて愚かな先生…
愛おしいくて…
悲しい生き物…
優しい先生は優しくいて欲しい…
狂ってしまうなんて許さない…
優しいまま、一緒に堕ちるんだ。
もう引き返せない…
もう引き返さない…
一緒に二人の世界へゆっくりと向かおう。
痛みと憎しみだけの世界から開放された俺…
けれど、一番の苦しみは優しさなんだよ…先生…
「ふふ……先生、大好き…」
狂い始めたんじゃない…
最初から狂ってたんだ。
先生に依存していたんだ…
もう誰かの為に身を引くなんてしたくない。
先生を手に入れられるなら何だってする…
だって先生は、こんな俺を愛してくれるんだから。
ふ、と鏡を見る。
そこに居たのは俺だ…
今までよりもちゃんと笑えている。
先生のお陰だ…ありがとう、先生…
鏡の中で微笑む俺の顔は…
「あはははははははっ…!!!」
まるで悪魔のようだった…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 243