アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
47*
-
俺の引き運はどうかしているのかもしれない。
障害物競争の最後の最後に、一番引きたくないお題を引き当ててしまうのだから。
紙に書いてあったのは
【好きな人】
見た瞬間固まった。
頭に浮かんだ人物は、当然ただ一人で、
また図らずもがな自分の気持ちを自覚する。
あいつに頼む時、なんて説明する?
とか、迷ったけど
『【好きな人】を引いた人が好きな人と1位でゴールすれば、その人と結ばれる』
くだらないジンクスが頭にチラついて、
そんなくだらないジンクスに縋ろうとしているなんて
バカらしいと思う、いつもの俺らしい考えをも
恋に浮かされた道化のような俺自身がかき消したらしい
気づけばなりふり構わずあいつを引っ張っていた。
1位
橘と勝ち取ったこの順位がバカみたいに嬉しかった。
当然、お題の内容を聞かれるわけだが、
照れ臭くてはぐらかした。
一度は無意識的に漏らしたこの気持ち
2度目くらいはちゃんと言いたかった。
だから、
今はまだ、言わない。
だけど、愛しい気持ちは収まるどころか
刻一刻と溢れてきて、
触れたい衝動はおさまらない。
愛しくて思わず手を伸ばせば、あいつは簡単に受け入れて、
そんなんじゃ、また食っちまうぞ。
そう思った。
障害物レースが終わった後、気まずそうな橘はいそいそと逃げるように仕事へ向かっていった。
かわいすぎて
調子狂うなぁー…
はぁ、と篭った熱を抜くかのように1つため息をついて、本部テントに戻る。
「あ、帝おつかれ〜!ね、お題なんだったの?なんではるちゃん?」
テントに入るとすぐに、グイグイと興味しんしんで聞いてくる湊に捕まった。
「…なんでもいいだろ、なんでも」
適当にあしらっても、湊は隣でうるさく喋り続ける。
半分上の空で生返事していたのだが、
「あ、そういやね、はるちゃんって恋知らないらしいよ〜かわいいよね!!!」
「…は?」
その言葉に思わず動きを止めた。
彼女いないのは知ってたけど、
初恋もまだって、まじか。
「はるちゃんの初恋相手が誰になるか、楽しみだよね〜、ねえ帝?」
俺の顔を覗き込んだ湊は何かを含んだような表情でニヨっと笑った。
こいつ…時々変に勘いいから嫌いだわ。
「仕事…してくる」
*****
ぐるぐると頭の中はあいつでいっぱいだった。
恋を知らないあいつが俺に向ける気持ち。
俺の勘違いじゃなければ、
最近は敵意から確実に何か違うものに変わっていたはずだ。
俺が笑うと楽しそうにすること
俺の言葉に反応してしまうこと
俺に触られて真っ赤になること
俺とのキスとか、それ以上のことがいやじゃないこと
その気持ちって俺のと同じじゃないのかな。
遠目に見つけたあいつを見つめる。
…無自覚とか、そんなの許してやんない。
なあ、
いろんなことの理由、ちゃんと自分で考えてみろよ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 56