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春風や 闘志抱きて 丘にたつ
俺が生まれたときにCMで使われてた有名な俳句? 短歌? に感銘受けちゃって、そのまま男の子に春風くんなんて名前つけた親だけど、愛情があるのは当たり前じゃねえっつー話。つか、こんなバカでクズな俺を見捨てないでいてくれて、感謝しかねえっつー話。
まーだから? 恩返し的な? 俺に出来ることって、これから真面目ちゃんになって社会に認められて、金稼いであいつらが老衰するまで見届けてやんぜっつー話なわけで?
だから、俺が更正したことを喜んで、大学行きたいって我が儘言ったら、喜んで大金出してくれた親には足向けて寝らんねーし?
つか勉強頑張るしかねえ。あと余計な金はかけさせない。バイトもしてる。そーゆーわけで毎日安いもん食ってるわけ。
「…………お弁当にする?」
「無理。俺が作れねえ」
「……………僕作るよ?」
「これ以上迷惑かけらんねーよ」
「うーん。……まあ、僕も朝遅い時あるしなあ」
水野はちまちまサンドイッチをついばむ。女子か。
大学は受かった。地元から出ることになった。金はない。じゃあどうするかってなって、俺を同じ大学に誘った水野は、あっさりとルームシェアを提案した。
……………や、それは、さすがに。
野郎と二人暮らし。つか、申し訳ないし。多分俺らの性格上、こいつに色々我慢させちゃうんじゃねーの? そうとしか思えない。
「…………えー、だって…………春風くん、絶対生活だらけるよ? 大学生ナメないほうがいいよ? 結構いるよ? そういう人」
「ていうか、一人暮らし、無理でしょ? 家事とかやったことある? 新居に必要なもの、わかる? 料理とか洗濯機の使い方とか、大丈夫? 光熱費の相場わかる?」
「勉強も教えてあげられるしねえ……あと東京って、一人暮らしでも家賃高いよ? 二人で折半したほうが、ちゃんとしたとこ住めるし、なんだかんだ楽だよ? 僕、トイレとお風呂が一緒になってるような間取り、絶対やだけどなあ……」
それは俺も嫌だ。
そんなわけで。
ルームシェア。
してます。
ただし、大学の奴等にはバレたくないから、お互い黙ってるけど。だって、どういう経緯でそんなことになったのか……それは俺の過去もバレるってことだ。おっかねえ。俺はもうカタギの道から一歩も出ないって決めたんだ。
早く一人前になって、両親を温泉旅行に連れてってやるまではなあ!
「……………春くん、あのね、ときどき怖い顔になってるよ」
「え、嘘、早く言えよ」
「……気ぃ抜くと眉間にシワよるっておかしくない? 生物として真逆じゃない?」
「うるへー。…………気ぃつけまふ」
ラーメンをすすって、汁を飲み干す。あー、まっず。
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