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水野がいかにすごい奴かを、なんとなーくべらべら喋ってたらネタは尽きなくて、今日のトレンドワードは水野になる。だって、他に話すことないし。流行のあれそれとか知らないし。サブカルもよくわかんないし。ていうか実際、水野はすごいし。
ハイキングして美味しいもの食べて、駅前の温泉に入ろうって話になる。
前もって、俺はパスってことは伝えておいた。
「えー、なんで?」
「んー。ちょっとね」
一部の人には口頭で、昔事故って身体に傷があるから、見せたくないって伝えておいた。それを知ってる人たちが、知らない人たちをうまく誘導してくれる。あいつ今日生理なんだよ、とか言っちゃう奴はちょっと軽く頭はたいといた。女子の前でなんてことを言うんだ、貴様は。かばってくれてありがたいんだけども、さすがにそれは。
足湯もあるし。ボディーシートも持ってきてるし。
「………………あれ。浅原も入んないの?」
「俺も生理なんだよ」
この手の冗談、マジで嫌いなんだけどな。
表の足湯に二人でつかる。
制汗系はMAROかGATSBYだと盛り上がって、話題は、やっぱりなんで風呂入んないの? に戻る。
浅原の答えは単純だった。
「ホモと風呂入りたくないだろ」
なんも言えなかった。
「………………………あー」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………いや、いいよ気ぃ遣わなくて」
「んん。ごめ」
「いいって。……深谷は?」
「えー? 事故ってさあ」
「そうなん」
「…………………………嘘です」
「はい?」
いや、だって。俺たぶん、今こいつを傷つけた。
言いたくないけど、友達なら腹割って話すのが普通じゃね?
水野は知ってることだし。
でもなあ。さすがに背中に刺青入ってるなんて言ったら、引くどころじゃ済まなさそう。うーん。
あ、こっちにしよ。
「…………傷は傷なんだけど」
ティーシャツをめくって腹を見せる。
「あ、すごい腹筋割れてる」
「違うそこじゃない」
脇腹。
消えない縫合の跡。
「…………昔刺されてさあ」
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