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帰るタイミングを失って、だらだら居座る。お互いの授業の話になったら、リンクするところも多くてちょっと盛り上がる。あー、でも、そろそろ帰んなきゃな。水野は今日どうしてんだろう。もう先に帰ってるだろうか。
「…………」
浅原のスマホが鳴って、反射的に画面を見てしまった俺は、それが電話だと知る。
ためらっている浅原を、出ろよ、と軽く殴って、奴の見せてくれた教科書に視線を戻す。恋人じゃねえんだから。アタシといるときに電話なんか出ないでよってか? あほらし。浮気相手から? こいつにゃアホほど相手いるっての。
わざわざベランダ出んなよ。
聞かれたくないのか。
あーなんか、もやもやする。変に気遣う自分が惨めだ。
「………………成海?」
少し開いたままの窓から、浅原の声は聞こえたり聞こえなかったり。なんか慰めてるっぽい。おお、間男の心境。
つーか、こいつ本当にモテんだな。
穏やかで、柔らかい声。雰囲気。……アキヨシ以外にも、あんな顔するんだ。てか、アキヨシだと思った。でもナルミって呼んでたな。
大学生活を謳歌すんのに、俺も女作ったほうがいいのかな。
その方が楽しそう。大学の奴ら見てて、そう思う。たまに羨ましくなる。うーん。でも俺の場合、その前に真人間にならなきゃなあ。勉強だって人一倍しなきゃいけないし、バイトも結構入れてるし。だらだら自分の部屋にひきこもって、ぐうたらする時間も欲しいし。って考えたら、全然時間がない。だらける日は必要。あれがないと息詰まって死ぬ。
はー、単車転がしてスカッとしてえな。
楽しかったことが、悪いことばっかで溜め息洩れる。ものを壊す。人を殴る。脅す。怯えさせる。駄目って言われたことばかりをやりまくる。
誰かに迷惑をかけてるから、怒られてるのに、俺は唯一の居場所を奪われて、自分の存在を全否定された気持ちになっていた。だから反抗して、余計酷くなって、その繰り返し。
自分が一番大好きで、自分が一番、大嫌い。
クスリに手を出さなかったのはどうしてだろう。死んでもいい、むしろ早く死にたいと思っていたのに。
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