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日も暮れて、殆どの家庭が各々の時間を過ごしだす頃。
珍しく柚希さんは仕事が忙しく、伍さんも帰ってきていない。
「秋」
ソファーでテレビを見ていたひろとさんが、俺に声をかけた。
「結婚しよ」
自分の足元に洗っていた皿が落ちて割れる音がした。
「秋っ?!」
ひろとさんが慌てて片付けに駆け付けるのがわかる。
「足血出てるじゃん…」
未だ放心状態で、思考が宇宙へ旅立っている俺を抱き抱えてソファーに座らせた。
その時、テレビを見てやっとひろとさんの言っていることを理解した。
『一週間前に発表された、アメリカの研究施設での“同姓同士でも妊娠ができる治療と薬”について、政府は今朝の会見で「使用を認める」としました。それにあたって、同性婚も国で認め、籍として登録できるとしています。治療や費用などについての詳しいことは公式HPに記載されています。』
「ひろ…ひろと…さん…」
「また今度改めてプロポーズさせて」
後ろから頬にキスをして、救急セットを取りに離れていった。
「あれ、秋クンどうしたの」
玄関が開く音にすら気づかなかった。
後ろから柚希さんが声をかける。
「あっ、あっ、あっ、足から血でてんじゃん!!!」
ここまで驚く柚希さんははじめてで、こっちが驚いて脳が冴えた。
「あ……お帰りなさい柚希さん。ちょっとお皿落としちゃって…ひろとさんが今救急セット持ってきてくれてます」
「なんだ…びっくりした……」
「俺もビックリしたよ。そこまで柚希くんが驚くなんて珍しい」
いつの間にか戻ってきていたひろとさんが、柚希さんの背後から声をかけた。
「僕ははじめてじゃないけどね」
さらにその背後から伍さんが声をかけた。
「二人ともお帰りなさいです」
「ただいま。足大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
伍さんは俺の頭を一撫ですると、着替えるために部屋へ戻っていった。
その背中を追いかけて、柚希さんが「俺は?俺の頭は撫でてくれないの?」と言っていた。
「あの二人は仲良しだね」
「何てったって6年だっけか。長いよね。あと俺以外に頭撫でられちゃだめ」
上書きするように頭をわしゃわしゃと撫で足の手当てを始めた。
「血塗れだ」
その声に自分の足を見ると、本当に血まみれだった。
「ひッ……」
「あぁ動かない動かない」
足を固定され、出きり限り血を見ないように顔を逸らす。
「秋って注射とか見れないタイプ?」
「い、痛いとかグロいのとか全部無理っ……」
たまに来る、ズキッとした痛みに顔を歪めながらも、やっと処置が終わったようだった。
「大丈夫大丈夫。もう終わったからね」
安心させるように頭を撫でると、血塗れのティッシュを捨てにキッチンへ向かっていった。
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