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1 トイレにて
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『♡クエスト成功♡』
ハートのエフェクトに埋め尽くされた画面。
一瞬、時と場所を忘れ「よしっ」と叫んでいた。
慌てて口を抑えたけどもう遅い。
誰かに聞かれてしまっただろうか。
息を止めて外の様子を伺う。
1、2、3・・・沈黙が続く。
ホッと息を吐いてスマホ画面に視線を戻すと、時間限定のゲリラクエストに成功した相棒のマオちゃんが『KAZ、ありがとうっ』とクルクル回りながら喜んでいた。
五年前から配信されている剣と魔法のオンラインゲーム『ソード♡クエスト』
経験値重視なストーリーとやりこみクエストの多さ故に、最近は初心者から敬遠され先細りしているのではと噂されている。
マオちゃんは半年前に知り合った貴重な新規参戦者。
ショートボブに猫耳をつけた膝丈白ローブの似合う華奢な女の子だ。
初期クエスト広場でクルクル回転し続けていたのを見つけて俺から声をかけた。
それをきっかけに、オンラインゲーム自体初めてだったマオちゃんと一緒にクエストに参加するようになった。
このゲームは、遊び人から王族まで千差万別の職業スキルが用意されているけど、俺のような剣士や武道家といった攻撃力重視のものを好んで取得するユーザーが多い。
マオちゃんは、組んでる俺に合わせて回復師や調合師といった地味スキルを取得してくれている。
KAZ『マオちゃん、ありがとう』
俺のアバターもクルクルとその場で回す。
筋骨隆々の身体に漆黒の鎧を身に着けた若者が、剣を振り上げながら隣の女の子に笑いかける。
マオ『今回の報酬、すごく楽しみだったから嬉しい。
早速着替えない?』
その申し出に応えたかったけど、時間切れ。
頭上で昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響く。
KAZ『ごめん、昼休み終了だ。
今夜はログイン出来そう?』
マオ『予定があって・・・明日の楽しみに取っておく』
明日は、マオちゃんとオフ会だ。
他のゲームにも参加してきたけど、オフ会は俺も初めて。
相手がマオちゃんだったから、『リアルで会ってみたい』と俺から誘ってしまった。
ここでまた会おう、の意味を込めた二人だけのサイン、握り拳を合わせてログアウト。
俺は座っていた便器から立ち上がり、扉に掛けていた鞄を手に取り外(現実世界)に出た。
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