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「よし、絶対に破るなよ」
彼はそう言って、包丁の刃を引き抜いてくれた。赤い血が僕の腕をつたい、ボタボタと床に垂れる。
「…っはぁ、はぁ…うっ、グズッ……」
泣きながら息を切らす僕を、彼は優しく抱きしめた。そして僕のまなじりの涙を親指で拭った。
「ん…っ」
彼の顔が近づいた刹那、チュ、とリップ音が響いて、僕の唇に彼の唇が重ねられた。舌は絡めない、触れるだけのキス。
「痛かっただろ?ごめんな」
彼は僕の傷口を止血して、消毒した。それが済むと、手馴れたように包帯を僕の腕に巻いていく。壊れやすいガラス細工に触るみたいに、僕のことを大切に扱ってくれた。
でも今の僕にはそれがとても辛かった。何も知らなかった頃の僕なら、きっと嬉しかっただろうし、実際嬉しかった。
でも今は、優しくしないで欲しかった。もう僕は将平とは終わりって決めたから。
いつかは捨てられるんだ。壊れたガラクタみたいに、呆気なく。彼は僕を愛していないし、僕ももう愛が何だか分からなくなった。ただすごく、怖いものだって思うだけ。
僕はもう二度と、彼に依存したくない。依存しちゃいけない。
だから
……逃げなきゃ
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