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どうしよ…。
あ、そうだ!地図!
廊下の端に掲示されている地図を見た。
でも、やっぱり
「分からない…」
地図が読めない。
この道を右なのか左なのか上なのか下なのか皆目見当もつかない。
とりあえず歩き回るしかない。
そう思って歩いていると、向こうから誰かが歩いてきた。
近づいてくるに連れて、それが誰だかはっきり分かった。
「西尾じゃん。こんなとこで何してんのよ」
「た、田中さん……」
彼女は長い髪をサラサラと振って、気位の高そうな目で僕を見据えた。
田中さんは怖い。
気に入らないことがあれば何をするか分からない。
一度右手を踏みつけられたことがある。
音原くんに誘いを断られたとかで…。
その時のことがフラッシュバックしてきて、無意識に足が後ろに下がる。
「そんな怖がんないでよ。前のことは悪かったわよ」
彼女は肩を竦めた。
そんなこと言ったって、心の中では悪いと思ってないくせに。
「ううん…別に、気にしてないから…」
「で、どうしたの?さっきからそこウロウロしてるけど」
「や、、あ…道に迷っちゃって……」
「嘘でしょ?こんなとこで普通迷う?」
田中さんがクスクスと笑った。
僕は自分の顔にぶわっと熱が集まるのを感じた。
「ほら、行くわよ」
唐突に、彼女は言った。
「え、?」
びっくりして聞き返すと、田中さんは早口に、
「迷ってんでしょ?どこに行きたいのよ」
「あ、あの、エントランスに…」
「エントランスね。案内してあげる。着いてきなさいよ」
そう言って彼女はつかつかと僕の前を歩いた。
僕は少し呆然としていたけど、はっとして彼女の後を着いて行った。
どうして僕に優しくしてくれるんだろう。
僕のこと嫌いじゃなかったっけ。
やっぱり人ってよく分からない。
分からないけど、
少し暖かい。
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