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3つのルール①
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宝はゆっくり目を覚ますと、見慣れた天井が見える。いつものキルシュの寝室だと認識すると安心した。
宝を使い魔だ奴隷だとさんざん嬲り手放さない自分勝手なキルシュが、突然自らの戒めで独房に入って宝を手放そうとした。だがそんなボロボロのキルシュを放っておけずに迎えに行ってしまった宝は、ますます離してもらえなかった。昨夜も獣の如きキルシュに、さんざん中まで食い尽くされた。
「起きたか」
「・・・・・・」
隣ではキルシュが枕を背もたれにしてタバコを吸っていた。玄関で散々凌辱され、ベッドでも無茶振りされた腰が痛む。
「動けるか、何か飲むか」
「動けない・・・水ほしい・・・です」
「ククッ、悪かった」
「反省してます!ねぇ!」
「してない」
宝の事を心配しているのかいないのか、キルシュは髪にキスを落としてベッドを離れる。起き上がれないのでシーツの中でモゾモゾすると、ふと尻が気になった。
「尻・・・切れてないかな」
さんざんまた嬲られた尻が切れていたらどうしようかとおそるおそる尻に触れてみるが、無事なようだ。安堵しているとコップに水を汲んできたキルシュが戻って来た。
宝の背中を支えるように抱き起こして水を飲ませてやる。喉が渇いていた宝はゴクゴクと一気に飲み干し、口元から溢れた水が喉を伝っていくのを感じた。
「んっ・・・」
「んんッ!?」
またキルシュにキスされた。すぐに離れたが、どんだけキスが好きなのだこの変態はと宝は思った。水を飲むとまた横に戻されて、キルシュもベッドに横になる。そのまま宝を抱き締めてきた。ちょっとビクッとするがそれ以上何もする様子はない。
「まだ寝てろ」
「・・・はい」
宝はまだ眠かったので目を閉じるのだった。
次の日、普通に朝を迎えた宝とキルシュはリビングのテーブル越しに向かい合って対峙していた。
「で、説明してもらいましょうか」
「めんどくさいな」
キルシュは相変わらずタバコ吸いすぎだが、構わずにまずは使い魔の話から始めてみる。
「とりあえず使い魔とかになる気はないので、首の鎖外してください」
「似合ってるぞ。別に外さなくても不便ないだろ」
「大ありです!こんなの母さんに見られたらなんて言われるか・・・」
「【俺はキルシュさんの奴隷でめちゃくちゃに可愛がられてます】でいいんじゃないか?」
「なんですか!その変態設定!っだあああああああーーーーー!!!」
身を乗り出して来たキルシュにまたアイアンクローをかまされる。
「いたい!いったー!?」
「うるさい」
「キルシュさんが真面目に話聞いてれば、俺だって大人しくしてますよ」
「じゃあ5分くらい聞いててやるよ」
「短っ」
キルシュは自分勝手なので拒否されたり耳障りな時はアイアンクローをする癖があるようだ。痛むこめかみを抑えながら宝は話を再び切り出す。
「とにかくですね、もう奴隷でも何でもいいんですけど普通に平凡に暮らしたいので鎖だけでも取ってくれませんかね」
「奴隷は認めるのか」
「もう奴隷でいいです。とにかく鎖を」
「何度も言うがダメだ。お前、自分の立場わかってるのか?希少種がホイホイ街歩ってたらレイプされたあげくに、またオークション行きだぞ。今度こそどこぞの変態ペットとして惨めに暮らす末路しか見えんな」
「いや、あんた、今までまさにそんな感じのことを俺にしまくってましたよね!?」
その辺りはさも知らん顔で、キルシュはタバコを吸い始めギロリと宝を睨む。宝はビビって怯んだ。
「じゃあ百万歩譲って奴隷と鎖は諦めますんで、一緒に暮らすのはなしでお願いします!」
「それもダメだ」
「えぇー」
「契約の鎖でお前に何かあったらわかっても、駆けつけた時に手遅れは御免だ。ここが1番安全」
「・・・・そんなに俺のこと好きですか」
決して自惚れているわけではないが宝は確信に触れてみる。気に入られてるという感情はなんとなく理解してきたが、ここまで雁字搦めに縛られる理由がわからない。男同士の恋愛なんて今時珍しくもないが、宝は男同士で恋愛した事はないのでその辺りの感情は未知の領域だ。
キルシュは宝の率直な質問が飛んでくると、さっきから不機嫌な顔がさらに眉間に皺を寄せて凶悪な顔になる。
「ひっ!!!」
「なんで俺がお前と生ぬるい恋愛ごっこしなきゃならん。再起不能になるまでぶち犯されたいのか」
「ぎゃっ!!!」
「・・・はぁ」
ため息をつきたいのはこちらだ。宝は一瞬心臓が止まったかと思った。キルシュは呆れたようにまたタバコを吸い出し、もはや宝の事を見てはいない。身体で引き止めたり優しく触れたかと思えば、いきなりの突き放しにキルシュという存在がますますわからなくなってくる。
とにかく宝は普通に暮らすためにはお互いのルールを教えてやらねばと考えてみる。猛獣にお手を教えるような気がして遠い道のりだ。
「わかりました。じゃあ、俺の出すルールを守ってくれるなら使い魔も鎖も同居もやります。えーと、そうだな、とりあえず3つで」
「言ってみろ」
「①俺の身体をいきなり乱暴に扱わない、特に性的に②話をちゃんと最後まで聞く③無駄遣いしない」
「お前、無駄遣いにやたらと命かけるな」
「家はビンボーなんで、もう命がけなんで」
「ほぅ・・・」
「さぁ、どうしますか。このルールが不満なら今から天剣のリーダーさんに直談判してきますので」
キルシュは提示された3つのルールを承諾するだろうか。じっと宝の目を見て咥えタバコを揺らしながら考え込んでいる。
数分くらい経つとタバコを灰皿で消し自身の心臓辺りに片手を当てる。そして呪文のような言葉を発すると、心臓辺りに赤い魔法陣が一瞬浮かび上がり弾けて消えた。
「?」
「お前のルールを受け入れてやるよ。心臓に誓いを立てた。ルールを破ろうとすれば術が発動して俺の身体に苦痛を与える」
「えぇっ!?そんな事までしなくても・・・」
「絶対守れる自信がない」
「・・・ですよね」
「その代わり俺からもルールを提示する」
嫌な予感がした。
「①俺がお前とセックスしたくなったらさせる②お前の問い掛けに答えたくない時は答えない③お前の為に買う物は無駄遣い扱いしない。受け入れなければ即座に監禁して二度と出さない」
嫌な予感は見事に当たった、明らかに自分の提示したルールを相殺してきたのだ。最後は完全に脅しだ。もはや宝はキルシュに手も足も出ない。これ以上のやり取りは無意味な気がして、宝は条件を泣く泣く呑んだ。
「キルシュさんって友達ぜったい居ないですよね」
「まぁな」
「うっ、ぅ・・・」
「宝、あとその敬語もやめろ。俺のことはさん付けで呼ばなくていい」
「え、でも・・・キルシュさんって俺より歳上ですよね?」
「29歳だ」
「一応社会的には目上には敬語とか敬意を払ってとか・・・」
「俺には必要ない。まずは、さん付けなしで呼んでみろ」
呼んでみろとは言えさすがにちょっとビビるが呼ばないとまたアイアンクローされそうで、意を決して呼んでみた。
「き、き、・・・・キル・・しゅ」
「なんだ」
なんだって何だ!?これ以上どうやって猛獣と接しろというのか。宝がモゴモゴしていると、キルシュは笑った。普通に笑った。
「宝、俺の名前の後にキスしたいって付け加えてみろ」
「はっ?」
「ルール①を提示する」
「!!!」
この男ここでなんというドSな不埒ルールを!だが承諾したルールを破る事になる、そしたら監禁だ。
「手荒なことしない・・・よな」
「そんな事したら俺の身体が危うい」
「うーん、うーん、・・・・キルシュ、キス・・・したい」
「わかった」
そう言うとキルシュは立ち上がり椅子に座る宝の背後まで移動して来た。宝はビクビクして固まっていると、肩の辺りから撫でられるように触られそのまま首筋と頬も撫でられた。そっと顎を掴まれて上を向かされる。そのままキルシュは上から宝の口に触れるだけのキスをする。
「キスしたぞ」
「っーーーーーーーー!!!!!!」
宝はキスされたのを自覚すると一気に赤面した。
「な、なんて卑怯な作戦を!?」
「なんの事だ、宝がしたいって言うからしたまでだ」
「騙された!」
宝は一枚も二枚も100枚も上手のキルシュには敵うはずもなくテーブルに突っ伏した。恥ずかしさでうーうー身悶えていると、キルシュは元の席に戻る。
「そういえば、お前ビンボーって言ってたな」
「・・・ソウデスケド」
「仕事を紹介してやるよ」
「・・・怪しげな店には行かないから」
「違う。まぁ着いて来い」
項垂れている宝を連れてキルシュは、天剣の中央本部へと赴いた。受付嬢に何やら言うと最上階への直行エレベーターに顔パスで乗り込む。扉を開けるとワンフロアがリーダー室となっている最上階へと辿り着いた。勝手に扉を開けて中に入るキルシュは、そうとう信用されているのだろうか。
「よぉ」
「君は相変わらずノックもなしに無粋だね。しかもまだ謹慎中なのわかってるのかな?」
信用されていなかった。扉の中には天剣のリーダー、エイドがデスクワークしていた。キルシュは勝手にソファーに座りオロオロしている宝を指でコイコイとジェスチャーし、自分の隣に座らせ肩を抱き寄せる。
「惚気なら他でやってくれないかな?ここは合い挽き部屋ではないよ」
「つまみ出さないお前が悪い」
「ふぅ・・・手のかかる子ほど可愛いと言うけど、君は出会った頃からまったく可愛さが成長しないね」
二人の会話から察すると昔馴染みなのだろうか。そういえばキルシュは天剣が設立されてから古株だと、カノが言っていたのを思い出す。
「今日はなんの用だい?」
「こいつを警備部に入れる」
「ぇ・・・・・・」
「それはまた大きくワガママに出たね」
「家でも職場でも目の届く所に置けて一石二鳥だ。それにこいつ、ビンボーらしいから金も稼げて母親に楽させてやれるだろ」
キルシュ様!!!ご主人様!!!宝は母親を気遣うキルシュが初めていい人に見えたきた。
「宝君の母君を使って自分の手中に収めようって魂胆が見え見えだよ」
「バレたか」
「前言撤回!キルシュはいい人じゃない!」
「おや、もう呼び捨てにする仲なのかな?」
「チガウ!!!あ、いや、すみません、違います」
思わずエイドにまでタメ口を聞いてしまった。
「いいよ、気にしないで」
さすが天剣のリーダー、心が広い。
「で、エイド。こいつ警備部でいいよな」
「うーん、宝君は戦闘出来なさそうだし、雑務業かな」
「じゃあそれでいいわ」
「雑用・・・」
現場であんな化け物と戦闘とかしろと言われても宝は無理そうなのでとりあえず雑務で、掃除くらいなら出来る。
「人事部には話を通しておくから、制服は警備部に行って貰いなさい。ようこそ、天剣へ。君の正義を貫かんことを」
「は、はい!お世話になります!」
宝は深々と頭を下げて執務室を出ると、新しい職場警備部へと向かうのだった。
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