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魔術師VS魔術師①
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銀の槍を作ったキルシュはまずは小手調べと、絶対防御壁【ガーディアンロードマスター】の魔術師コノエに向かって走り出す。その槍をコノエの腹に向かって突き刺そうとするが、弾かれた。やはり防御能力が高い。突き崩すにはもっと一点に集中しなければならない。
「ガキのくせになかなかやるな。じゃあコレはどうだっ」
「っ!」
いつの間にか2本目の銀の槍を生成し同時に腕に突き刺す。さすがに一瞬怯んだコノエは身体を回転させて槍を弾く。コノエは魔術師としての才能はあるが戦闘能力はまだまだキルシュには及ばないようだ。
「お前、才能あるくせにこんな所で無駄使いしてんなよ」
「・・・僕はお兄ちゃんだから・・弟や妹達を守らないと・・・いけないから」
初めてコノエがボソボソと喋る。理由はよくわからないが兄弟のためらしい。とはいえ同情作戦には応じないキルシュは問答無用で攻撃を仕掛ける。
「そうかよ、じゃあボコボコにされても文句言うなよ。お兄ちゃん」
「・・・ッ」
コノエは1本目の銀の槍のあとに、2本目の銀の槍を重ねて追撃させる攻撃によろめく。体制を整えようとする時にはもう間に合わなった。3本目の銀の槍をさらに追撃させてきたキルシュの攻撃をもろに直撃し、魔術障壁は破壊され後ろに吹っ飛ぶ。
瓦礫に突撃しぐったりしているコノエの胸ぐらをつかんで持ち上げる。まずは腹に一発鳩尾をくらわせた。ゴホッとむせ込み胃液を吐いたコノエは、さらに2発目を殴られると助骨が折れた痛みが走る。
「直接殴られると痛いだろ」
「ガハッ・・・」
「悪いがてめぇはここでスクラップだ」
そう宣言すると掴んだまま殴ろうとする。だが後ろからシャツを誰かに掴まれた。振り返ると、あいらだった。怯えて手は震えている。
「ぉ、ぉぉぉ、お兄ちゃんを、殴らないで・・ください」
「あ?」
「ひっ!お願いです・・・お兄ちゃんを、殴らないで」
「・・・・はぁ」
キルシュは怯えるあいらの顔が、一瞬宝とダブり気を削がれて手を離す。コノエは地面に倒れて咳き込んでいた。あいらはそんなコノエに駆け寄り泣き出す。
「お兄ちゃんっ、お兄ちゃん・・・」
「・・・あいら・・・」
「次は容赦しねぇぞ。ここを抜けて2人でまっとうに生きるんだな」
実は二人は兄妹だった。戦意の喪失を完全になくした2人を放っておいてキルシュは宝の元へ急ぐ。
「やべぇな、魔力使い過ぎた・・・」
しばらく走ると、扉が見えた。それを魔法陣の爆散でぶち破ったキルシュは、宝が男にのしかかられているのを目撃する。
「人のモノに勝手に触れてんなよ、クソ野郎」
「キルシュー!」
「よぉ、間に合ったか。バカ使い魔」
「パピー」
「・・・玖音」
宝を組み敷いていたのは見知った顔だった。かつてストリートチルドレン【UnderBlackDog】での仲間と呼ぶべきか。
「久しぶりだな、パピー。今じゃ天剣の雌犬だってな。お偉いさんのでもケツにハメてるのか」
「テメェの仕込みがよかったからな、出世しまくったぜ」
「でも今じゃ、こんなつまんねぇガキの相手とはな」
「あっ」
「宝っ!」
玖音は宝の髪を鷲掴みにして引き寄せる。よく見ると宝は下肢はさらけ出され、腹には白濁が飛び散っている。キルシュの金目が怒りに震える。
「宝に何した」
「パピーへの土産にしようと思って、バイブ突っ込んで遊んだ後に俺のでも可愛がってやった。アンアン言いながらケツ振ってたぜ、昔のお前みたいにな」
「ぶッコロス」
キルシュは腕に魔法陣を発生させて玖音に飛び掛る。玖音は何かの力で宝の拘束具を切り離し脇に抱きかかえると、攻撃を避けた。
「おー、危ねぇ、危ねぇ。お前人質居るのにどういう神経してんだ。坊主に当たってたらどうする」
「宝ごとお前をコロス」
「あー、なるほど。俺に触れるくらいなら壊したほうがマシとか、相変わらず狂ってんな。坊主、この狂犬と番はやめとけ」
「・・・俺はキルシュの心臓で、キルシュは俺の心臓だから」
「・・・禁忌の魔術使ったな」
「だからなんだ」
玖音はしばらく会わないうちに、とうとうイカれたキルシュに憐れみの目を向ける。そのきっかけを作ったのは自分だが。
「だが、そこまでこの使い魔君にご執心だとますます手放す気がなくなった。返して欲しけりゃ、力ずくで奪いに来いよ」
「言われなくてもするさ」
キルシュはまた魔法陣の鎖で攻撃に出るが、今度はその鎖を一刀両断された。コノエと違って手には触れていないが、鋭い刃物で切られたように真っ二つだ。
「魔術・・・玖音、お前」
「まぁ俺もお前と別れたあと、色々あってな。今じゃ魔術師の仲間入りよ」
「・・・」
明らかに切断系の魔術だろうが、遠距離か近距離かの系統がわからなければ迂闊に手が出せない。しかも脇には宝を抱えたままだ。元軍人もしていたと聞いていた玖音は、戦闘能力も体力も元から高い。自己流のキルシュとは戦闘のセンスに差がある。
「宝君と早く大人の遊びの続きしたいから、とりあえずパピーにはここでご退場してもらおうか」
「あ、あなたとは大人の遊びなんてしてない!」
「照れるなよ」
「〜っ!」
「おい、宝!帰ったらじっくりその辺聞くからな」
「ひゃいっ」
「帰ったらねぇ・・・勝つ気満々だな。じゃあ成長したパピーの雌犬穴も見せてもらおうか」
この下品な言葉使いはもしかして玖音から伝染したんじゃないかと思うほど、2人はなんとなく似ていた。宝は脇を抱えられたまま、玖音が放つ謎の音に気付く。
見えない玖音の魔術。考えているうちに玖音の攻撃がキルシュの脇腹を掠っていき、脇腹が切り裂かれて血が滲む。直撃していたら真っ二つだ。魔力もあまりないのでキルシュは最小限の動きに控える。
「魔力切れか?タバコばっか吸ってないで、体力つけろよ」
「余計なお世話だ脳筋野郎」
正直余裕もないキルシュは銀の槍に託すか捨て身で魔法陣を当てるかしか思いつかない。外れればこちらがゲームオーバーだ。
「来ないのか?ならこっちからいくぜ」
ヒュンっと音がするとまたキルシュの頬をかすった見えない攻撃が、傷を作る。玖音の横でずっと耳を澄ましていた宝は、なんとなく音の正体に気付く。空気だ。正確には空気を振動させて攻撃している。だから直線にしか攻撃ができないし、音のなる瞬間さえ聞き逃さなければどのタイミングで魔術が発動しているかわかるはず。
「キルシュ!空気の音だ!」
「コイツっ!?」
「空気・・・真空波か。【死せる風エアリエルライダー】、単純攻撃野郎」
「単純攻撃だが当たれば即死だぞ」
「全部避けてぶん殴る」
「死のリズムゲーム開始ってわけか」
キルシュは文字通りリズムゲームの容量で真空波の魔術を避けていく。だんだん近付きほぼ正面まで辿り着くとありったけの魔力を銀の槍に変えて、玖音めがけて伸ばした。だが玖音に直撃する寸前に槍は突然消滅する。
その瞬間に、カウンターで玖音は思いっきりキルシュを殴りつけ地面に叩きつけた。
「はぁはぁ・・・惜しかったな。魔力切れか」
「クッソ」
「じゃあなパピー、あの世で楽しく雌犬でもやってろよ」
「宝っ」
「き、キルシューーーー!」
地面に突っ伏すキルシュめがけて玖音が真空波を放とうとした瞬間、宝の腕に赤い魔法陣が出現し鎖で玖音を拘束すると鎖はそのまま引き摺り壁まで吹き飛ばした。宝は地面に落ちて、ぐえっと情けない声を出す。
「ぐっ!!!」
「えっ!?えーーーー???」
「なんで俺のジャッジメントが・・」
「くっそ、坊主の魔術が飛んでくるとは思ってなかったぜ。油断した」
「はぁ・・・とりあえず形勢逆転だな」
「わーー!!!キルシューーーー!!!」
宝は安心したのかビックリしたのか、倒れているキルシュの背中にダイブした。そのままギュウギュウと羽交い締めにして抱き着く。
「重い、傷に触るな」
「キルシュー!よかったー!」
「わっ、テメェ鼻水付けんな!」
「お前ら人前でいちゃつくな」
「これのどこがイチャついてるように見えんだよ」
ギャーギャー騒いでいるうちになんとか地下まで辿り着いたカノと國千歌は、キルシュの背中でくっつき虫になっている宝とその横で鎖に縛られている玖音に何のプレイごっこだろうと思った。
「はっ!視姦プレイかも!」
「なんの話ですか」
カノは高度なプレイを想像し國千歌はちょっと呆れた。後から応援に来た警官にストリートチルドレン達を任せ、國千歌は玖音を拘束して連行する。さり際に玖音は、キルシュに話しかける。
「パピーの大事な宝君、俺も気に入ったんだが是非欲しいね」
「てめぇは余生を監獄で過ごしてろ」
「じゃあ看守には宝君を指名しようか」
「・・・看守には地獄の番犬を付けてやるよ。中央棟の最下層の番犬をな」
「独房に犬なんていたかなぁ?」
宝は一瞬前に独房にいたオッドアイの看守を思い出した。
「あ、そういえば、こいつらどうする?」
カノは拘束したストリートチルドレンの2人を指差す。実はキルシュと玖音の戦っていた部屋に、アズとショートはずっと隠れていたのだ。キルシュはちょっと思い立ったように手に魔法陣を宿してみる。すると魔力切れかと思っていた魔法陣が発動したので、不思議に思った。
「どっちがブレイカーだ」
「ぎゃー!コロされるー!」
「僕を殺しても人類のゴミは減らないよ」
「ってことは、このバカそうなピンクの奴が不可視の領域【ブレイカー】か」
「ブレイカーってなに?」
宝は聞き慣れない言葉をキルシュに尋ねる。
「魔力障壁発生させてその場の魔力を打ち消す魔術師だ。まぁそれ以外何もできないが、それなりに使える半端な能力って奴だ」
「だから、キルシュの槍が消えたんだ」
「多分な」
「こっちの金髪の人は魔術師?」
「残念だけど、僕は普通の人間」
「あ、もしかして警備部にハッキングしてきたのお前?」
「そんな僕をさらにねちっこくハッキングしてきたの、あんた?」
「いや、違うけど」
ストーカー癖の恋人が、とはとても言えない。とりあえず2人はそこそこ厄介な能力があるので、警備部にしばらく拘束する事にした。
「おい、待て。そういえば、宝にバイブ突っ込んだのどいつだ」
「「こいつ」」
玖音とショートは二人してアズを指差した。アズは死にそうな顔して腰を抜かす。
「ひっ!?俺は玖音さんに、ご褒美に突っ込んでもらおうと思って用意したのにー!」
「悪いな、アズ。俺はお前の変態趣味は興味ない」
「フラれたね」
「玖音さーん」
「玖音、お前バイブどころか宝に生で突っ込んだだろ」
「それが残念ながら出来なかったんだわ。いいところで、お前がドア壊して入って来たから」
「なんだと!」
カマかけられた。玖音は最後まで食えない男だ。玖音はおそらく最下層の独房で終身刑だろうか。アズはともかくショートはまだ未成年だ。処遇に困っていた。
「とりあえず、このガキ2人に大人の説教してやらないとな。取調室借りるわ。宝も来い」
「う、うん?」
取り調べのやり方でも教えてくれるのかなと宝は思っていた。
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