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20 期待 奏side
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卵スープおいしい…
初めて食べる味…
斗真さんに会ってから初めて自分で食べられた。
おいしい…
自然と口から言葉が出ていた。
本当に美味しかった…
今まで無理に話そうとはしなかった。
でも、声を出そうとすると喉に蓋がされる感じがして出なかったから…
さっきのは違う、自然と出た…詰まる感じもなかった。
斗真さんも驚いた顔をしていた。
透さんにはすごいって言ってもらえた。
嬉しかった、
なんだろう、胸の当たりが温かい…
斗真さんとお話したいな…
…また期待してしまう…
忘れちゃだめだ…
ずっとここには居られないこと…
そうだ…捨てるのはいつだろう…
期待して辛くなる前に…
前にもあった…1度だけ…
お客さんに拾われた…
あれは、1週間だけ長期で買ってくれたんだ、
すごい優しい人だった。
3日間はいっぱい痛いことされた。
でも、4日目から急に優しくなった。
「痛いことしてごめんね」っていっぱい謝ってくれた。
それから4日間はすっごく優しくて、いっぱい美味しいものも食べさせてくれて…
『ずっと一緒に過ごそう。』って言ってくれた。
それで期待しちゃった…
ホントに家に帰らなくてもいいのかなって…
ずっとこの人と幸せに暮らせるのかなって…
そんなことあるはずもないのに…
1週間が経って父さんが迎えにきた。
僕はずっとこの人といられると思ってたのに…
この人は父さんに
「コイツとは3日しかヤってないから3日分の金でいいよな?」って言った。
当然父さんは怒った。
そのお客さんにではなく、僕に…
それからの記憶はあまりない…思い出したくない…
暗い部屋で痛みを感じなくなるまで殴られ続けたこと、
目が覚めた時には、
知らない男4人にヤラれていた。
一晩で4日分を稼ぐために…
殴れたりヤられたりした痛みや苦しみよりも…
あの人に裏切られた心の痛みが1番辛かった…
胸が引きちぎられるようなあの感覚…
もう…同じ思いはしたくない。
もう、期待なんてしない。
斗真さんも…僕のこと…
捨てる…
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