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瓢箪から駒⑫
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「母さん、もし…なんだけどさ。もし、大好きな人の恋人を好きになったら…母さんならどうする?」
その日の夕飯時、俺は勇気を出して母さんに聞いてみた。
すると母さんは目をキラキラと輝かせ
「それって…、もしかしてあおちゃんの恋バナ?嬉しい~。母さん、待ってたの~!誰?誰?」
と聞いて来た。
「俺じゃ無いんだけどさ…。ちょっと…相談されてさ…」
モゴモゴと呟くと、ニヤニヤしながら母さんが
「相談ね~。まぁ、良いわ。そういう事にしといてあげる。」
そう言うと微笑んで
「そうね…。あおちゃんが大好きな人って、相手もあおちゃんが大好きよね」
と母さんが質問して来た。
俺はぼんやりと蒼ちゃんを思い出して、頷き掛けてハッとする。
「だから、俺じゃ無いんだって!」
そう叫ぶと
「あ~、そうだったわね。ごめん、ごめん」
母さんは笑ってそう言うと
「そうね…。そのお友達が大好きな人は、そのお友達の事も大好きだと思うの。もし、お母さんがその友達の立場なら、本人に言うかな?」
って答えた。
「え!」
驚いた俺に、母さんは考えながら
「悩むって事は、その好きになった人を諦められないって事でしょう?だったら、素直に大好きなお友達に伝えてみたら?」
そう呟いた。
「でも!」
「あのね、もしお母さんがそのお友達の大好きなお友達?…あぁ!もうややこしい!じゃあ、例えば!よ。例えばだからね」
「うん」
「そのお友達があおちゃんで、あおちゃんの大好きな人が蒼ちゃんだとするわね」
って母さんに言われてドキリとする。
「あおちゃん!例えば、よ!た·と·え·ば!OK?」
母さんに念を押されて俺は頷く。
「蒼ちゃんだったら、あおちゃんがその事に悩んでいるのを知らないでいた事を苦しむんじゃないかしら?」
「え?」
「だって、立場が逆だったら、あおちゃんはそうなるでしょう?」
母さんの言葉にハッとする。
「あおちゃんがもし逆の立場だったとして、あおちゃんは蒼ちゃんを嫌いになるの?」
母さんに聞かれて考える。
逆の立場…。
(俺が翔さんの恋人で、蒼ちゃんが…)
って考えてみた。
もし、蒼ちゃんが俺と同じ気持ちを抱えていたとしたら…。
「…うん。言って欲しかったって悩む。知らない間、どんだけ辛い思いさせたんだろうって…」
俺が呟くと、母さんは優しく微笑んだ。
「それで?」
「ん?」
「あおちゃんはどうするの?」
母さんの言葉に息を呑む。
「自分の気持ちから逃げるのか、立ち向かうのか」
「…」
「あおちゃん…じゃなかったわね。そのお友達の状況は分からないけど、やるだけやってからでも良いんじゃない?誰かを心から好きになれるなんて、そう滅多に無い事でしょう?」
母さんの言葉に背中を押された。
「母さん、俺…」
俺はこの日、逃げない選択肢を選んだんだ。
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