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クリスマス・キャロル
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きらきらの飾りつけ。色めく街中の空気。行き交う人たちの楽しそうな顔。
それがいつもより一層まぶしく映るのは、きっと今日が特別な日だから。
「でも、みんな浮かれすぎだと思うんだよね」
「そうだとしても、一番浮かれてる歩には、誰もそんなこと言われたくないと思うよ」
二葉兄ちゃんの言ってることに何も言い返せない自分がなんだか情けない。
テーブルの上で頬杖をつくぼくの目の前に、精巧な装飾つきのケーキが置かれる。
「ほら、駄々をこねてまで欲しがったケーキだぞ」
「駄々なんかこねてないもん、作ってよって言っただけだもん」
膨らませたぼくの頬を、兄ちゃんがリスみたいだって言って笑う。
だって、どんなブランドのケーキより、二葉兄ちゃんの手作りがいつだって一番美味しい。
「菓子はあまり専門分野じゃないから、気に入ってくれると安心するな」
「兄ちゃんが作るならなんでも気に入るよ!うー、なんか食べるのもったいない…」
「そこまで言ってくれるのは嬉しいけど、食べてもらえないと食材も悲しむぞ」
兄ちゃんの言う通りだと思った。食べないと、それこそもったいない。
ケーキの形が崩れないようにフォークでそうっとすくって、ゆっくり口に運ぶ。
ほろ苦いチョコの風味が口いっぱいにふわっと広がって、苺の酸味が程よく絡まってくる。
ケーキを頬張りながら兄ちゃんの方を振り返ると、兄ちゃんはくすくす笑っていた。
「それほどお気に召していただけたなら、何よりです」
「…兄ちゃん、お店にいる時そんなふうに喋るんだ?」
いいもの見ちゃった。やっぱり今日は特別な日だ。
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