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出会い1
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きっかけは、ちょっとした嘘だった。
有名な繁華街の大通りから一本小道に入ったビル内にあるバーは、最近のぼくの行きつけだった。
大学入学で上京してきたぼくは、成人したタイミングでずっと気になっていたそのバーを訪れた。
そこは、男同士の同性愛者の集うバーで、年齢も性別もあやふやで派手な化粧をしたママが切り盛りする、いつ訪れても繁盛している賑やかなお店だった。
今まで自分の恋愛対象が女性ではないとは薄々気がついていたが、誰に話したこともなく、もちろんリアルの恋愛経験はない。
バーには出会いを求めて、なんてつもりは毛頭なく、ただ通学とアルバイトに疲れた日々の息抜きみたいなものだった。自分と同じ思いを抱えた人間がそこにはいる、というそれだけで安心できた。
そのはずが。
絵に描いたような、一目惚れをぼくはしていた。
ぼくの座っていたバーカウンターから少し離れたソファ席。
座高の高さや投げ出された足の長さから、細身で長身のスタイル。クリーングしたてのようなぱりっとしたシャツに、黒いスラックスを履いている。
わずかに癖のある髪はすっきりとセットされていて、細いまゆに、若干のタレ目。
ぼくよりは年上なことは確かだか、まだ若々しく、整った顔立ち。
「あの、奥のソファ席の若い人って、このお店、よく来られるんですか?」
ぼくはカウンターごしに、ママを捕まえて小声で尋ねる。
「新条さんのこと? うちの常連さんだけど、シュンくん会うのはじめて?」
「はじめてです!」
「気になるの?」
ママが、ぼくの顔を見て、にんまり口角をひきあげる。
「いや、ちょっと、かっこいいなって思っただけで……」
もう一度、新条さんを盗み見る。新条さんはグラスを傾けながら、隣り合った男性カップルと何やら談笑している雰囲気だ。
「まあ、たしかに顔はかっこいいけど、新条さんM男子にしか興味ないサディストだからねぇ……。シュンくん、SMとか平気なタイプ?」
SM、はとくに……。と、ぼくは答えかけて、脳内で自分で自分にストップをかける。そして次の瞬間には、
「……SM、興味あります!!!」
と、まるっきりの嘘を答えていた。
「そうなの?」
ママが少しだけ驚いたような顔で、でも「まあ、シュンくん、あんまり性癖の話とかはしてくれないもんね」と、ぼくの嘘に気づいた様子はない。
「なんか、少し恥ずかしくて……。でも経験は全くなくて……」
「そういうことなら、紹介してあげよっか。ね!」
「い、いいんですか?!」
ママが、うきうきとした様子で手招きすると、早速、新条さんのもとへとぼくを案内した。
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