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~空夜side~
「行け行けー!!」
「声かけしっかり!」
2年生全員リレー真っ只中。
様々な声が飛び交う中、空夜は次走者となったため、立ち上がる。
(俺の次は昴流で足早いし、転ばなきゃ大丈夫。)
緊張してバクバクする心臓を落ち着けるためにそう言い聞かせる。
現在B組は3位で、今走っている宏樹が、2位のH組に追いつきそうである。
「A、H、B、D、E、G、C、F。」
誘導の先生が告げた順番通りにレーンの内側に並ぶ。
テークオーバーゾーンに入る手前で宏樹がH組を抜いた。
「GO!!」
宏樹の合図で走りだす。
バトンは無事受け取り、カーブに差し掛かったところで、すぐにH組に追いつかれる。
A組は少し先だ。
(やばいっ……!)
H組の走者と足がぶつかり、空夜の足がもつれる。
次の瞬間には地面にぶつかる。
頭が真っ白になって、声援が遠く聞こえる。
数秒もたっていないのに時間がすごく過ぎたような気がした。
立ち上がって走る頃にはD組とE組に抜かされていた。
「空夜ー!!」
最後のカーブを曲がると、昴流の声が聞こえる。
「ここまで来い!あとは任せろ!」
手を伸ばし、バトンを受け渡す。
コースを外れてすぐ、座るより前に手を引かれた。
*
~京side~
空夜より先に走り終えていた京は、空夜が転んだ瞬間にどきりとした。
ケガがないか、足を痛めていないか気になる。
次走者として待っている昴流も一瞬、動揺が見えた。
空夜が立ち上がって走り出す。
「空夜ー!!ここまで来い!あとは任せろ!」
バトンがつながって、空夜のほうには悠平が行っていたので、京はそのままリレーの行く末を見守る。
昴流はまず、空夜が転んだあとに抜かされたD組とE組をすぐに抜かした。
それから宏樹が一度抜かしたH組を再び追い抜く。
次の走者は俊哉だ。
もう後半に差し掛かっていて、走る人たちは皆足が速い。
バトンパスの時点で、1位のA組とほぼ同着。
(A組の走者は……野田くん?!)
後ろを走るH組の走者は智陽、その後続くクラスの走者も男女いるが全員選抜リレーの選手である。
「村田くーん!!」
「むらちゃーん!」
「「がんばれー!!」」
少し前に座っていた兼と2人で、声を張り上げる。
俊哉の次の走者はB組女子で50m走最速の小野原美琴だ。
美琴に続いて、ハンドボール部の矢野嘉人、陸上部の本庄暁人、野球部の津野直哉、アンカー、陸上部の諸井賢吾と運動部が続く。
ここで俊哉が抜ければ、1位ゴールもあり得る。
「「うわぁぁぁぁぁ!!!」」
「きりちゃん!!むらちゃん抜いた!!抜いたー!!」
一気に盛り上がるB組。
京も兼とハイタッチする。
「そのまま行けー!!」
「航抜き返せ―!!」
声援が飛び交い、レースは進む。
いよいよアンカー。アンカーは一周を走る。
最後のクラスまでゴールすると、ピストルが2回鳴った。
*
~昴流side~
自分で1位まで行くと決めていた。
空夜がどんな順位できても、全員抜こうと思っていた。
実際には俊哉に最後を委ねる形になった。
走り終わって、呼吸を整えながら救護所を見やる。
悠平に連れていかれた空夜の傷は大したことはないようで、夏目からの手当てを受けて、悠平と2人で立ってこちらを見ている。
(よかった。)
正直転んだときはドキッとしてしまった。
ちょうど保護者席の前あたりで、そのあたりにいた恋と明希にも見えていただろう。
(恋さんも心配してそうだな……)
チラリと視線を向けると、ちょうど明希と目が合う。
空夜は大丈夫、と目で訴えてみた。
明希はOKと指で丸を作り、隣にいた恋に話しかけている。伝わったようだ。
そんなことをしている間に、B組は1位のままアンカーへ。
最後のクラスまで走り切り、ピストルが鳴る。
「ただ今のレースの結果を発表いたします。」
アナウンスがグラウンドに流れる。
「1着、青色B組。」
発表はまだ続くので声はあげられないが、周りにいるクラスメイトとアイコンタクトしたり、タッチしたりと喜びを分かち合う。
すべて終了して退場すると、俊哉と京と3人で救護所に向かった。
「昴流と俊哉ナイスすぎ!!こっちで空夜と興奮してたわ!!」
嬉しそうな悠平とグータッチ。
空夜ともハイタッチする。
「悠平が空夜連れていくの早すぎてビビった。」
昴流がそう言うと、京が頷く。
「それは俺も思った。」
さらに俊哉にも言われ、悠平は苦笑した。
「それはさー……」
「空夜!!!」
後ろから聞こえた声に全員で顔を見合わせる。
「あれの圧のせいよ。」
そういえば、陸玖も走順は悠平と近かったな、と思い出した。
「大丈夫?!」
「……転んで擦りむいただけなんだけど?」
「ゆうくんがそばにいてよかった。すぐ救護所連れてってくれたし。」
「それ、お前からの圧のせいだから。」
「えぇ?だって、痛そうだったんだもん。」
あと他の奴に触ってほしくない
ぼそりと呟いた陸玖のその言葉は、きっと昴流にしか聞こえていなかった。
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