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〔 雅 side 〕
鳥のさえずり 、 カーテンの隙間から覗く朝日 。
眩しさに瞼を上げると 、 ゆっくり身体を起こした 。
体調はすこぶる良い 。
雪と一緒に過ごすようになって 、 俺の健康はずっと保たれている 。 それは俺の精神的な部分が整っているから 、 なのだが 。
暫くの間 、 何も考えずに虚空を見つめていた 。
「 雪 … 、 ゆき!!!! 」
隣で眠る恋人を起こそうとベッドに目線を落とせば 、 そこには誰もいない 。 あるのは白い布団のシーツだけだ 。
慌てて寝室からリビングまで移動した 。
しかし雪の姿はない 。
どこに行った?逃げ出したのか?そんな馬鹿な 。
あいつは絶対に出ていかない 。
自分から出ていくような奴じゃない 。
どこだ 。
どこにいる 、 俺の雪はどこに …… 、
「 …… みやびさん? 」
何度も聞いた声 、 愛しい雪の声 。
男にしては少し高めのその声の持ち主は 、 トイレから出てきた所だった 。
大きな瞳をこれでもかと見開いて 、 ゆっくりとこちらに近寄ってくる 。 その瞳は不安と困惑 、 少しの恐怖に満ちていた 。
「 雪 …… 良かった 、 そこに居たのか 。 」
心臓がうるさい 。
緊張と恐怖で押し潰れそうだった心臓は 、 雪の姿を捉えて静かになっていく 。
歩み寄る雪を 、 そっと抱きしめた 。
「 おはよう 。 隣に居ないから 、 びっくりした 。 ごめんな 、 うるさかったろ? 」
「 んん …… 、 」
腕の中で首を振って 、 大丈夫だよと伝えてくれる 。
それから頭を擦り付けたり 、 見上げて俺の髪を弄ったり 。 僅かに潤んだ瞳で見つめてくるものだから 、 違う意味で心臓が痛くなった 。
いつもの雪ではない 。
ただ 、 こんな恋人も可愛いくて好きだ 。
普段は甘えることも雪の方から触ることもしないから 、 俺としては少し寂しい 。 だが 、 この瞬間で寂しさも消えてしまった 。
もっと甘やかそう 、 もっと依存させよう 、 その思いが強くなっていく 。
雪が満足するまでたっぷり触らせた後 、 寝室に戻って布団に潜り込んだ 。
「 おはようございます 、 先輩 。 雪さん 、 大丈夫でしたか? 」
「 松田 、 朝から悪いな 。 幼児退行みたいなことが起きていて 、 俺から離れたがらない 。 精神的に不安定なんだと思うが 、 酷いようだったら病院に連れていく 。 」
「 了解しました 。 じゃあ 、 有給ってことでいいですか?社長もその方が喜ぶと思いますよ 。 」
「 頼むよ 。 三浦にもよろしく伝えといてくれ 。 」
「 もちろんです 。 雪さんのこと 、 ドロドロに甘やかしてあげてくださいね 。 得意分野なんですから 。 」
無表情で何を考えているか分からない男でも 、 口は達者らしい 。 偉そうなことを言って 、 すぐに電話を切りやがった 。
仕事を休んだのはこれで初めてだ 。
溜まっていた有給を消していくには丁度いいし 、 休んでくれと社長に泣かれたばかりだった 。
今日はこのまま一緒にいれる 。
仕事を休んで雪との時間を得るなんて 、 嬉しすぎて堪らない 。
仕事は優秀な二人の後輩がやるだろう 。
「 ………… 、 」
携帯を眺めて息をつくと 、 クイクイっと服を引っ張られた 。 きゅっと服の裾を握った指は 、 細く白い 。
「 ん?どうした? 」
見上げてくる目元を指先で撫でると 、 口角を緩く上げて俺の身体に乗り上げてきた 。
心臓の上辺りに耳を乗せて 、 瞼を閉じる 。
自分でも気持ち悪いほどに雪のことになると考えてることが同じだと気づいた 。
出会った頃から 、 雪に対しては『 愛しい 』という感情しか湧かない 。
これは今までにないことで 、 頭では理解している 。
雪に対する俺の思いや行動は 、 決して普通じゃないことも分かっているつもりだ 。
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