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本当に人間か?
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強い日差しに照らされる青々とした葉を見ても、あれは食べてもお腹を壊さないだろうか、としか思えなくなっていた初夏。
もう5日もまともな食事にありつけていない。
4年ほどお世話になった児童養護施設に別れを告げて1ヶ月程経っていた。
こんな状態になることは少しくらい予想はできていてもおかしくなかったのだが、きっと考えたくなかったのだろう。
16歳、この地域では職に就くことが出来る年齢になった俺は、もう1人でも生きていけると思いこんでいた。
しかし現実はそう甘くはない。
両親がいない、住所不定の人間は、まともな職場ではそう簡単に雇ってもらえないのがこの世界での常識のようだ。
もう定職に就けるかどうかはとりあえず後回しにして、今飢え死にしないためになるべく早く食べ物にありつきたい。
森の中を探せば食べられる草や木の実が見つかるかもしれないと思いやってきたのだが、野草の知識なんて持ち合わせていないのでどれが食べられる草なのか、全く検討がつかない。とりあえず見た目普通そうな葉っぱをいくつかかじってみたが顔が歪むほどの苦さである。
そもそも野菜は嫌いなのだ。
苦いものを美味しいと感じられるほど大人の舌を残念ながら俺はもっていない。
きっと食べられる草でも美味しいと感じることは出来ないだろう。
木の実を探すしかないか。
空腹でふらふらの体を無理にでも動かし探し歩いていると、何やら草木の向こうから物音がする。
何だろう、動物だろうか。
そうか、動物を捕まえて食べよう。
どんな動物だって焼けばそれなりに食べられる味になるはずだ。火を起こしたことなどはないけど、木と木を擦ると摩擦熱で火がつくと聞いたことがある。大丈夫だ。たぶん。
物音がした方へ少しずつ、音を立てないようゆっくりと忍び寄る。
するとガサッと茂みが揺れ、何か小動物のようなものの影が出てきたかと思うと、即座に遠くへ消えていった。
全然足音は消せていなかったらしい。少し近づいただけなのに危険を察知され、逃げられてしまった。
動物って耳がいいんだなぁ、と少し感心。
まだ何かいるかもしれないとわずかな期待を残しつつ小動物がいたと思われる茂みに近寄ると、赤や黄色の小さな木の実が7、8個集められていた。
食べ物だ!
さっきの小動物が集めたものだろうか。ありがたくいただこう。
木の実が集められているところから1つ拾い上げ、躊躇なく口の中へ。
味がする…味がする!!!
微かに甘く、瑞々しい。
5日間もまともに食事をしていないせいか、ものすごく美味しく感じる。
そのまま勢いに任せて2個目、3個目と口の中にほうり込む直前、気がついた。
これ全部食べても全然腹の足しにならないんじゃないか…?
そうだ、これを餌にして罠を作り、動物を捕まえるのはどうだろうか。
もうガキじゃないんだから、後先考えて行動しなきゃな。
後先考えずに行動した結果が今の飢餓状態なのだが。
餌を食べるため動物が近寄ってきたら籠がかぶさって閉じ込める、というガキでも思いつくような単純な罠をしかけた。
自分は見つからないよう少し距離を置いて身を潜めること数十分。
何か動物が動くような物音が近づいてきた。
ようやく獲物が来たか、しかし早かったな。
隠れているこの場所からではよく見えないが、音は聞こえる。
ガサッ…
籠が落ちるような音がした。
かかったか!?
案外あっさりだったな…と罠の方へ近寄る。
かかっていた動物は…?
「、んあ゛?」
「……………………え。」
人間だった。
フード付きのパーカーと、ジャージのズボンを身につけ、グレーで短めのボサボサ髪、背はあまり高くない、俺と同じ歳くらいの男のように見える。そんな人間が罠の籠に上半身を突っ込み俺が仕掛けた餌の木の実をもぐもぐと食べている。
唖然。
予想外すぎてなんと声をかけていいかもわからず立ち尽くしていると、罠にかかった人間がこちらに気がつく。
その瞬間ものすごい勢いでこちらに向かってくる。
あまりの速さに後ろに仰け反ることしか出来ない俺の腕を易々と掴み、勢い良く、ひとつの躊躇もなくかぶりついた。
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