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補習
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「よし、始めんぞ」
「・・・・・・・」
これから補習を始めようというのに・・・
なんだ、この静けさは・・・
いや、これが本来の補習じゃないか。
何をおかしがる必要がある。
でも・・・
「篠村、何沈黙してんだよ」
「えっと・・・これでやんの?」
「は?」
そう言って、篠村は恥ずかしそうに辺りを見回している。
これって言われても・・・。
ただ机をくっつけて隣に座っているだけではないか。
「・・・何か問題でもあるのか?」
「いや、そういう訳じゃなねぇけど・・・黒板使ってやんないのかなーって・・・」
「あぁ、それなら別に。複数人相手じゃないし。お前一人相手に黒板は必要ねぇよ」
「そ、そっか・・・」
だが篠村は挙動不審のままだった。
「・・・篠村?」
「あ、えっと・・・どの教科教えてくれんの?」
「んー・・・どれでも?」
「え、全教科出来んの?」
「まぁ、教える程度には・・・多分」
「うっわ、自慢かよ」
「なんでそうなる」
そして二人っきりの補習が始まろう・・・としていたが一つ、ずっと気になっていたことがあった。
「・・・篠村」
「・・・何」
篠村は気だるそうにこちらに顔を向ける。
「お前さ、世界史好きなの?」
「は?なんで」
「いや、前相良先生がお前のこと授業中居眠りしてて困るって言っててさ。でも世界史の授業は起きてんじゃん。数学も点数見る限り苦手って訳でもなさそうだし、なんでかな、と」
「それ、は・・・」
篠村はバツの悪そうに目をそらして、でもすぐにこちらに顔を向き直した。
・・・まただ。
この感じ。
その彼らしくないま真面目な顔に、俺はまた前のような不思議な気持ちになった。
「あんただから」
俺、だから・・・?
「・・・なんで?」
「っ・・・・・!」
それきり篠村は黙り込んだ。
顔を赤く染めて今にも泣きだしそうにしている。
・・・俺、何か酷いこと言っただろうか。
そしてしばらく沈黙が続き、ようやく篠村は平静を取り戻した。
・・・だが、
「・・・萎えた」
「は?」
「俺帰るわ」
「はっ!?ちょ、まっ・・・」
俺が止めるよりはやく、篠村は鞄を肩に掛け、教室から出ていった。
こうして、第一回目の補習は残念ながら失敗に終わってしまったのである。
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