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次の日
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昨日何があったのか正直わからなくて、きっと篠村は何事もなかったかのように自分の席に座っているのだろうと。
そう思い込もうと朝のHRに教室に入ったけれどもそこに篠村の姿は見えなくて。
そしてその前の席に佐藤がいることから篠村は休んだんだと教えられた。
あの二人はいつも一緒に学校に来ているから。
あの二人は本当に、仲が良いから。
その日の佐藤はずっと不機嫌だった。
・・・・・・・
「先生!」
「ん、なんだ」
HRが終わり、教室から出て廊下を歩いていると、佐藤から声をかけられた。
「・・・・賢が休んだのは知ってますよね」
「まだ連絡は来てないがな」
佐藤が何も言わなくなったので俺はその場を去ろうとした。
はやく、この場から離れたかった。
しかし、
「・・・先生」
「・・・今度はなんだ」
佐藤の方を見ると佐藤はこちらを睨んでいた。
「先生ですか」
「は?」
「賢が今日休んだ原因は、先生ですか」
今一番聞かれたくないことを・・・。
「さぁな。体調不良なんじゃねぇの」
「質問に答えてください」
「・・・知らねぇよ」
「もしも、」
そして佐藤はさらにこちらを強く睨んだ。
「もしも賢が休んだ原因が先生だったら・・・俺、許しませんから」
そう言って佐藤は教室に戻っていった。
「・・・・・・・・」
俺の、せい?
だったらどうしろっていうんだよ。
あんなの、ただの正当防衛じゃないか。
おとなしくやられろとでも言うのか?
冗談じゃない。
でも。
でも。
もしかしたら、俺にも悪い部分があったのかもしれない。
もしかしたら、もっと良い止め方があったのかもしれない。
もしかしたら・・・篠村を悲しませないで済む方法があったのかもしれない。
でもすべては昨日の話。
今考えても意味がない。
そしてその後、俺は篠村の母親から体調不良で休むという電話が来たのだった。
・・・・・・・
「そういえばさぁ、今日篠村休んでたな」
あぁ、まだその話か。
「篠村って、篠村賢治か?」
「あれ、秦野知ってるのか?」
相良さんがそう聞くと、秦野さんは少しバツの悪い顔をした。
「まぁ、ちょっと。相談を受けてな」
相談?
篠村が秦野さんに?
担任の俺ではなく、保険医の秦野さんに?
なんで・・・?
「相談の内容はっ!」
気づけば俺は口を開いて秦野さんに質問していた。
「ど、どうしたんだいきなり」
「え・・・あ、いや、別に」
「んー、悪ぃけど内容は話せねぇなぁ。プライバシーってもんがあるし」
「っ・・・」
俺は勢い良く立ち上がった。
「すみません、俺帰ります」
「え?あ、ああそうか。じゃあな、京介」
そして俺は急いでその場を出た。
「・・・で、さっきの話なんだけどさぁ・・・」
「ん?」
・・・・・・・
「・・・おいそれ、プライバシーがどうのこうのって話だったんじゃないのか?」
「いや、プライバシーっつうより小林個人に聞かれちゃいけないことだから。なんつうの?恋バナ?みたいな」
「・・・女子かお前は」
・・・・・・・
「・・・・・・・・」
何をしてるんだ。
てかなんで俺はここにいるんだ。
俺の目の前には篠村の家があった。
ピーンポーン
・・・・・・!
押してしまった・・・。
今離れたらただのピンポンダッシュだぞ。
『はーい』
この声は・・・篠村の母親だな。
「篠村賢治君の担任の者ですが」
ガチャ
「・・・・・・・・」
出てきたのは母親ではなく、篠村本人だった。
「・・・・何」
「え、えっと・・・」
あれ、何を言いに来たんだっけ。
そもそもなんでここにいるんだっけ。
「た、体調不良の方は大丈夫かな、と・・・」
き、気まずい・・・。
「用はそれだけ?」
「あ、ああ」
「あんたさぁ・・・」
篠村の声が曇る。
「そんだけのためにわざわざここに来たの?」
「・・・わ、悪い。迷惑、だったか?」
俺がそう答えると篠村は舌打ちをし、俺の胸ぐらを掴んだ。
そして俺に顔を近づける。
その時、俺は不意に思ってしまった。
ああ、また口が触れそうだな、と。
しかし俺の思いとは裏腹に、篠村は怒りの表情を浮かべる。
「それがさ、『期待させてる』って言ってんだよ・・・!」
「・・・・・・!」
期待させてる。
またその言葉か。
「あんたはさぁ!生徒が体調不良で一日休んだだけでいちいち見舞いに来んのかよ!!」
「それ、は」
「帰れ!!」
「!!」
「・・・あ、いや・・・」
篠村は何かを言おうとして止めた。
「・・・すみません、帰ってくれますか」
「え・・・?」
「明日は学校、行きますから・・・だから」
「・・・そ、そうか。なら良いんだ。じゃあな、ゆっくり休めよ」
俺はその時、篠村の敬語に感じた違和感と、何かを失ったような喪失感でいっぱいだった。
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