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次の日(篠村視点)
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今日は五時に目が覚めてしまった。
学校に行くまでまだ時間がある。
その間何をしていようか。
そういえば昨日、何があったんだっけ。
ああ、そうか。
振られたんだ、小林に。
それどころか嫌われたかもしれない。
小林に酷いことして、酷いこと言って。
その挙句、
『はは。最低だなあんた』
何言ってんだよ。
最低なのはどっちだよ。
俺じゃねぇか。
「・・・ごめん」
ごめん、ホントにごめん。
俺は居もしない小林に謝り続けた。
ガチャ
「!?」
「あ、やっぱり賢ちゃん起きてたの」
部屋に入ってきたのはお袋だった。
「か、母さん・・・ったくいきなり入ってくんじゃねぇよ。あと「ちゃん」付け止めて」
「ふふっ。良いじゃない、可愛くて」
「別に可愛さとか求めてねぇ」
まったく。
俺だって思春期迎えてるんだし、ちょっとは考えろっつうの。
「・・・なぁ、母さん」
「ん?なぁに?」
「今日、学校休んでもいいかな」
「・・・え?」
俺がそう言うと、お袋は顔色を変え、
「ちょっと待ってて」
と言って部屋を出ていった。
お袋が部屋を出てやることなんて一つに決まっている。
ああ、もうすぐめんどくさい奴がくるぞ。
そして俺の予想は的中した。
ドアがガチャッと勢い良く開き、そこから出てきたのは・・・
「賢っっ!どうした!!」
俺の兄貴だ。
「いじめかっ!いじめられたのか!?ならお兄ちゃんが今すぐ学校に文句言いに行くぞ!」
「違ぇから!勝手なことしなくていいから!」
どうしよう。
このままじゃ学校を休めない。
それどころかもっとめんどくさいことになる。
「にしてもおかしいな。親衛隊として剛に賢を護るようにと言ってあるんだが」
「俺の知らない間に剛に変なこと吹き込んでじゃねぇよ!・・・なぁ頼むよ」
俺の頼むという言葉にやっと兄貴はこちらに耳を向けた。
「いじめにあってる訳じゃねぇんだ。一日だけで良いから。だからさ・・・」
「賢・・・」
あのいつもうるさい兄貴が急におとなしくなり、
「そっか。賢は疲れたんだな。家で勉強頑張ってたしな」
そう言って俺に笑顔を向けた。
兄貴はブラコンでうざくて暑苦しくて。
でも優しかった。
「じゃあ母さんには俺が説得しとくから。ゆっくり休んでろ」
「うん・・・」
そして兄貴は部屋を出ていった。
その一時間後に剛がきた。
兄貴が今日は休むと言ったら、そうですかと言っただけで何も聞いてこなかったらしい。
まぁ、その方が気が楽で良いんだが。
しかし、学校が終わったらまた来るとも言っていたらしくて・・・。
ピンチだ、俺。
・・・・・・・
そして剛は言ってた通りに夕方にまた来た。
「は、はは・・・ホントに来たんだ」
「ん?迷惑だったか?」
「まぁちょっと・・・」
「うわー正直」
剛のいつも通りの冗談口調に少し安心する。
しかし、そう思ったのは一瞬だけだった。
「・・・で?なんで休んだの?」
う・・・やっぱりそう来たか。
「・・・答えたくないって言ったら?」
「えー?言わないのー?」
「・・・・・・・・」
今まで剛に隠し事をして後悔しなかったことはない。
俺は仕方なく剛に正直に話すのだった。
「へー、振られたのか」
「何それ。軽くない?もうちょっと哀れみの目をさ・・・」
「うわぁ、篠村君ホントかわいそう。かわいそ過ぎて俺何っていいかわかんないよ」
「・・・・・・死ね」
「ちょ、冗談だって。そんなに怒んなよ」
「俺はな、真面目に考えてんの!それを嘲笑うかのように・・・」
「えっ、篠村君嘲笑うの意味知ってんの?意外」
こ、こいつ・・・!
絶対にこの状況を楽しんでいる。
「もういいじゃん」
「え?」
「賢は十分頑張ったよ。きっとすぐにもっと良い人が見つかるって」
「・・・・・・・・・」
そうだ。
いつまでも引きずってたら俺は一生前を向けない。
諦めよう
諦めないと
小林だってきっと迷惑してる
・・・・・・・・
剛は少し話した後明日は来いよと一言言い、帰っていった。
そして一人になった数分後にまた来客が。
その来客というのは・・・小林。
その時たまたまリビングにいた俺は、小林が来たことにすぐ気づいた。
ピーンポーン
あらお客さん、そう言ってお袋ははーいとベルに向かって返事をした。
『篠村賢治君の担任の者ですが』
・・・え?
担、任・・・?
って、え!?小林!?
ななななんで!
「か、母さん、俺が出る」
「え?」
・・・・・・・・
ガチャ
「・・・・何」
「え、えっと・・・た、体調不良の方は大丈夫かな、と・・・」
「・・・・・・・・・」
体調不良?
ただそれだけ?
「用はそれだけ?」
「あ、ああ」
「あんたさぁ・・・」
あんた暇なの?
他に何かあるんじゃないの?
それとも、本当に俺を心配してきたくれたの?
アホらし・・・
また期待してしまうところだった。
すでに俺は小林にこっぴどく振られたではないか。
「そんだけのためにわざわざここに来たの?」
「・・・わ、悪い。迷惑、だったか?」
何それ。
迷惑だったかって?
そう思うなら来んなよ。
そんなこと言って、本当は俺の反応で遊んでんだろ?
・・・なんて。
小林に多分悪気はないんだろうな。
そんな酷いことするような人じゃないってことくらい知ってる。だって俺は、
ずっとあんたを見ていたんだから。
・・・でも。でもさ。
『ふざけるのもいい加減にしろ』
あんたそう言ったじゃん。
俺、正直あれは応えた。
あんたから見て、俺はそう見えた?
あんたは俺のこと、軽いって思ってる?
あんたにとって
俺って何?
「それがさ、『期待させてる』って言ってんだよ・・・!」
「・・・・・・!」
俺はなぁ、もう諦めたんだ。
もうあんたなんか・・・どうでもいい。
これ以上俺を苦しめないでくれ。
「あんたはさぁ!生徒が体調不良で一日休んだだけでいちいち見舞いに来んのかよ!!」
「それ、は」
「帰れ!!」
「!!」
「・・・あ、いや・・・」
ああ、まただ。
また小林に酷いこと言った。
そんなことしたい訳じゃないのに。
せめて、元通りの教師と生徒に戻りたかったな。
「・・・すみません、帰ってくれますか」
「え・・・?」
・・・そうか。
敬語を使えば良いのか。
そうすればただの教師と生徒だ。
なんだ、簡単じゃないか。
あとは小林が、小林先生がそれを受け止めてくれたら・・・
すべてが元通りになる。
「明日は学校、行きますから・・・だから」
「・・・そ、そうか。なら良いんだ。じゃあな、ゆっくり休めよ」
そう言って小林先生はこちらに背を向けて帰っていった。
その後ろ姿は何故か頼りなく見えた。
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