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微笑
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いつもなら数分経ってやっと口を開ける篠村は、今日は珍しくすぐに口を開いた。
しかしそれはとても残酷なもので。
「・・・俺、さ」
「・・・・・・」
「・・・補習、やめようかなって・・・」
「・・・え?」
・・・やめる・・・?
「もう俺には必要ないし。それにやっぱり自分の力で勉強しないと・・・だから、その」
そんなの、ただの言い訳にしか聞こえない。
俺から離れるための、言い訳。
「・・・嫌なのか」
「え?」
「俺と二人きりになるのが」
「い、いや、違くて・・・」
はは。自分はもう篠村に嫌われてしまっているのか。
もう手遅れかもしれないな。でもここで引いては駄目だ。ここで引いたら本当に篠村は自分から離れてしまう。それだけは、駄目だ。
「・・・謝ればいいのか?」
「・・・え?」
篠村は動揺を隠せないようでいる。俺らしくない行動に驚いたのだろう。
「なんなら、土下座でもしてやろうか」
「っ・・・」
そして俺が床に膝をつけると、さっきまでただ動揺していただけの篠村はやっと体を動かした。
「やめろよ!!あんた何考えてんだ!教師として恥ずかしくないのかよ!」
篠村は俺の腕を掴み、無理やり立たせようとした。しかし無気力な俺はそれに従おうとはしなかった。
「・・・もう、許してくれねぇか」
「・・・・・・・・・」
ふと考えていたことが口から出た。それに対し篠村は何も言わなかった。
思ったことがうっかり口に出るとか・・・自分はどれほど参っているのだろうか。
「俺、なんか変だな。なんかもう・・・」
駄目かも。
そう言いかけたところで篠村が俺と同じ高さになるくらいにしゃがむ。そして俺の手をぎゅっと握った。
「しの、むら・・・」
「小林、聞いて」
あれ・・・今小林って・・・。
「俺、本気だった」
本気?
篠村は一体なんの話をしているのだろうか。
「本気で小林のこと好きだったし、・・・本気で、抱きたいとも思った」
「・・・・・・・・・」
俺は黙って篠村の話を聞いた。それしかできなかったから。
篠村は悲痛な顏を浮かべ、何もない床を見つめながら話している。
「あの時の告白も本気だったから・・・だから、小林にふざけるなって言われて・・・俺・・・」
篠村の悲痛な顏がさらに濃ゆくなる。
そんな篠村の顏を見て、俺も一緒に悲しくなった。そうさせてるのは俺なんだと、そう思いしらされて。
あぁ・・・
あの時篠村が泣いていたのは、俺に怒られて拗ねてたのではなく、俺が言ったこと対して傷付いていたのか。
「・・・ごめん。あの時は、つい・・・」
俺が軽く頭を下げて篠村に謝ると、篠村は首を横に振った。
「小林は悪くないよ。小林がああやって言ってくれなかったら多分俺、暴走して自分を抑えれなかったと思う」
「でも、」
あれはいくらなんでも言い過ぎだ 。自分で言ったことでありながら俺はそう思った。
「それに、あれでやっと俺も諦めがつきそうだし・・・」
「・・・え」
諦める?
それはつまり・・・俺から、離れるってことか・・・?
なんで。俺はそれが嫌で・・・だから土下座ぐらい・・・そう思えたのに・・・。
「俺もう帰るよ。それじゃ」
篠村はそう言って微笑を浮かべた。
そして気づくと俺は、立ち上がろうとする篠村の腕を掴んでいた。
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