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「であるからして─⋯」
授業が始まると同時に漸くつけられた冷房が、ひんやりとした冷気をゆっくり教室に流していく。
時たまそよりと肌を撫でる冷たい風が心地良い。
「......」
「......」
「つまりこれは─⋯」
「.............」
「.......あ、次のページいいかな?」
「あ、おぉ...」
...俺は今、転校生くんと友達よろしく机をくっつけ教科書を共有して授業を受けていた。ボーッとしていた俺を他所に、左から伸びてきた手が代わりにペラリとページをめくる。
......なぜこうなったのか。
いや、答えはもう分かっている。どうやら今日に限って隣の席の奴が休んでるらしく、前の席の俺が後ろに移動させられ、さらには今日一日の世話係まで任されてしまったのだ。思わずムスッとした表情で教師を見つめる。
「……」
「60ページ、」
「あ、あぁー、もう教科書使っていいよ。」
さっきから白い手がヒョロヒョロと視界に入る度にどうにも気が散ってしまって落ち着かない。小さな声で咄嗟にそう告げて、そのまま返事も聞かずにグイッと教科書を左の机に押しやった。どうせ授業なんてまともに受けないのだ。俺なんかより真面目そうなこいつに渡してやった方が教科書の正しい使い道だろう。
「見ないの?」
「うん。大丈夫。」
「...そう、ありがとう。」
短い会話。目も合わせない。愛想のあの字すら感じられない。
こんな俺に世話係を任されて転校生くんも可哀想に。きっと今頃今朝の俺のように心の中で不満をぶちまけてることだろう。なんでこいつなんだ…と。
「……」
カタ…と小さな音を立てながら、軽く椅子を引く。机の中に入れておいたスマホを取り出し馴染みのチャットアプリを立ち上げると、一番上のトーク画面を開いて慣れた手付きでトントンと文字を打った。
「(転校生の隣の席今日休みで、代わりに俺が教科書見せることになった。ついでに今日一日の世話係も。)」
送信ボタンを押すと、トーク画面にパッと吹き出しが追加された。30秒...いや10秒?まぁそのくらい間ずっと画面を見つめていたが、既読にはならなかった。
まぁ都合良くスマホなんて見てねーよな...。
そう思い、諦めて画面を閉じようと電源ボタンに手をかけたときだった。
「だるい?」
「ゔっ!!?」
突然耳もとで声が聞こえ驚いた俺は、間抜けな声を上げてビクリと体を跳ねさせた。ぶつかってしまった机が大きな音を立てる。
「.....山城(やましろ)、携帯没収な。」
「へっ...?あっ...」
教室中の視線を集める中、俺の右手にはしっかりとスマホが握られていた。
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