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「んでここが、」
「理科準備室だね。」
「そう。理科委員は授業前にここから─⋯」
あのあとクラスの奴らには笑われ馬鹿にされ、昼休みの時もダラダラと絡まれ、大好きなコロッケパンは大して楽しめなかった。
「なんで急にあんな驚いてたんだよ」と何度も聞かれたが、そこで転校生くんの名前を出せば、本当に大した理由もないのに何も知り得ないあいつとのことで話が掘り下げられるのではないかと思い、正直に言えなかった。
適当に「怖い動画見ちまったんだよ」と言えば、さっきから理由を知ろうとしつこかったそいつは目をキラキラさせ、「初知り〜!」とこの上なく嬉しそうな様子でいかにも胡散臭い恐怖映像やら画像やらを見せてきた。昼休み時間が休み時間じゃなかった。…そして意外に怖かった。
壁に寄りかかりながらそんなことを思い返していると、突然肩にポンッと生暖かい感触を感じて肩をビクッと揺らす。
「山城くん聞いてる?」
「お前...、まず声をかけてからにしろよ。」
「何回もかけたよ。」
目の前には、首を傾げた転校生くんがいた。
困ったように笑みながら一歩後ずさる。
「ここはもう一通り見て回れたから、次いいかな?」
「おー。」
今俺は、先生に任された通りしっかりと転校生のお世話係を務めていた。放課後になり、何も言わなければ案外このままバックレることができるのではないかと思ったが、バッグにさっさと荷物を詰めている最中に律儀な転校生くんからお声がけをいただき、無事校内をご案内をさせていただくこととなった。
移動する間はずっと無言で、またあまりよろしくないチャット内容を見られたこともあり気まずいことこの上なかった。
まぁ直接「嫌だ」だの「めんどくさい」だのといった文を打っていたわけではなかったが、転校生くんが「だるい?」と聞いてきたように、あの文を見れば当人の心中は察することはできるものだろう。
だがそんな時間もあと少し。もう殆どの場所は見て回り、残すはあと三階のみ。三階は基本的にあまり使われておらず、教室も大体が資料置き場か物置場となっていて、実際生徒がよく使っているのは長い廊下の両端にある図書室とパソコン室くらいだった。
案内するのもその二ヶ所だけで十分だろう。
階段を上り切り、先に図書室のある右方向に向かう。図書室は基本的に私語は厳禁ということもあり、二階まではあったような外に漏れ出ていた生徒たちの声もなく、異様な静けさが漂う。
「ここは....図書室だね。」
「そ。」
「ちょっと軽く本とか見て行ってもいいかな?」
「あー...、どうぞ。」
やべ。あからさまに出てたかも。
特に用事があるわけではないが、正直面倒なことに付き合わされる時間が長くなるのは嫌で、それが思ったより声に出てしまったと思った。
またやらかしたか...?と恐る恐る転校生くんの顔を見たが、当人は大して気にしている様子はなく、むしろニコリと微笑みかけてきた。
「一緒に見ようよ。」
「え、まじで勘弁....。」
「図書室は嫌い?」
「いや、そういうわけじゃねーけど...、」
「それなら一緒について来てよ。」と言って手をがっちり掴まれギョッとする。抵抗するにはあまりにも適さない場所で、渋々ついて行かざるを得なくなった。
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