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『番』…。
それはこの世のαとΩを強く結びつける為の刻印。
ずっとずっと、憎たらしいと思っていた。
ずっと、こんなものは消えて仕舞えば良いと思っていた。
αという存在が。
いつの日か訪れる、彼を縛り付けて離さないであろうその存在が、
恨めしくてたまらなかった。
ーー折角、消え去ってくれると思ったのに。
君は俺の雇った唯の黒服すらも愛してくれるだなんて
余程俺のことが好きなんだね。
でもそんな優しさは危険だよ。
「うなじを噛まれるだなんて痛かったろう…。
酷い目に合って辛かったろう?…レイ。」
PCの画面一面に映し出された、今より少しあどけない顔付きをしたその男の肌に触れる。
奴と番になったことが運命?
笑わせないでほしい。
君と俺が出会えたことこそが運命だ。
邪魔をするのなら…、もう一度
今度はもっと、苦しんで壊れてもらわないと。
ーーほんの2ヶ月前の話だ。
感染が拡大していく中、レイを傷付けたαがいた。
許せなかった。
やはりαなどという種族を野放しにすることはできない。
レイが危なすぎる。
柄にもなく青い顔をして事務所に飛び込んできたβと偽るその男に、
身内の感染者から搾取した血液を仕込んだ茶を飲ませた。
…もちろん、検査薬は”陽性“を示す。
αはこの世からいなくなるべきだ。
少なくとも、レイには近寄ることのないように。
症状の出始めたその男は、同僚の言う限りでは早々に弱っていったらしい。
これでレイを守ることができた。
…そう、思ったのに。
酷いじゃないか、レイ。
俺の計画を台無しにしてしまうだなんて。
けれど、そういう一筋縄ではいかないところも
君の素敵なところだって知っているよ。
「お前は俺のものなんだよ。
……早く、気づいてくれよ。」
デスクトップの画像は
当時の履歴書に貼り付けられていた証明写真。
一見変化はないけれど、少し伸びた髪の毛と
それから多数の人間に愛されて出てきた色気。
…今の君の方が、ずっとずっと綺麗だ。
画面に映し出された男の名は
『有栖 玲』
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