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異変15
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(…………でも、嫌なはずなのに、なんでか嫌じゃないような気がして、だけど、そうすると胸の奥が痛いような、寒いような、不思議な感じがして、……僕、どうしたんだろう)
漠然と抱いた不安のようなものに、しかし少年は気のせいだと言い聞かせて、作業に集中することにした。
そうして黙々と手を動かし続け、どれくらいの時間が経っただろうか。
不意に扉を開ける音がして、少年はペンを動かしている手を止めた。どうやら来客らしい。
そっと玄関の方を窺えば、入口に見知らぬ男が立っていた。服装からして、この辺りに住んでいる商人か何かだろうか。
「いらっしゃいませ。ソファにお掛けになって、少しだけお待ちください」
そう声を掛けてから、さっと画材の片づけをする。あまり待たせるわけにもいかないから、最低限ペンや絵の具が乾いて駄目になってしまわない程度で済ませてしまおう。
そうやってざっくりとした片づけを終えてから、少年は客が待っているソファへと向かった。
「すみません、お待たせしました。刺青のご注文ですか?」
例によって白熱電球を思わせる笑みを顔に貼り付けてそう言った少年に、客の男の方もにこりと微笑んできた。
「いやぁ、ここの店主さんはとても腕が良いと聞いてね。是非にと思ったんだよ。ああ、これ、お宅の常連さんからの紹介状ね」
そう言った男が、二つ折りの紙をすっと差し出してくる。しかし、少年の店は特に紹介がなくても入れる店だ。紹介状があれば値引きするだとか、そういうサービスも特に行っていないから、こんなものはいちいち必要ないはずだが。
訝しく思いつつも紙を受け取って中を開き、そして目に入った文字に、少年は僅かに目を見開いた。
『現在、帝国の手の者が貴方を狙っています。上手く誘導しますので、話を合わせてついて来てください。安全な場所までご案内致します』
思わず客の男に目をやれば、彼はさり気ない仕草で上着を少しだけはだけさせ、その内側に縫い付けられている紋章を見せてきた。ほっそりとした金色の獣を基調にしたその紋章は、紛れもなくギルディスティアフォンガルド王国軍のものである。
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