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異変17
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一応店の戸締りをしてから男の後を追うと、店からは少しだけ離れた通りに、背中に翼の生えた四つ脚の獣が待っていた。少年はあまり騎獣に詳しくないので種類までは判らないが、翼があるということは、空を飛べる騎獣の中ではそこまでランクの高い種類ではないはずだ。優れた能力を持つ騎獣は総じて翼を持たないということを、少年は知識として知っていた。
「店主さんには前と後ろ、どっちに乗って貰うのが良いかな?」
「あ、ええと、それじゃあ、後ろに乗らせて頂きます」
赤の王と乗るときはいつも前に乗らされていたが、背後に体温があるのはどうにも落ち着かないのだ。
「了解。でも、しっかり捕まっといてくれよ? 店主さんを落とす訳にゃあいかないからな」
男の言葉にこくりと頷いてから、改めて騎獣に目をやる。どうやらこの騎獣は二人乗りのものらしく、鞍が二つ取り付けられていた。
少年が後ろの鞍に座るのを確認してから、男が前に跨る。
「それじゃあ行こうか!」
陽気な声で男がそう言えば、それに応えてひと声鳴いた騎獣が翼をぶわりと広げる。そして、風霊を纏わせた翼が大きく羽ばたき、少年はみるみるうちに空中へと運ばれていった。
相変わらず空路を行くのは慣れないし、何故だか赤の王と乗るときよりもずっと風の抵抗を感じるようで、少年は内心でハラハラしながら鞍についている持ち手を強く握った。
少年は知らないことだが、飛行型の騎獣に快適に乗るためには風霊魔法で常に気圧や気温を含む環境調整を行う必要がある。勿論この男もそれを試みてはいるのだろうが、赤の王のそれと比べるとお粗末なものだ。特に少年を連れているときの赤の王は、自身の魔力量の多さに任せて地上にいるときとほとんど変わりない空間を維持している。そこまでのことができる人間は、それほど多くはないのだ。
だが、幸いにも飛行時間はそこまで長いものではなかった。少年と男を乗せた騎獣は、王都から少し離れた場所にある林の前に降りたのだ。王都へと続く主要な道から外れたこの辺りは、人気があまりないことで知られている。
注意深く周囲を見回してから、男は少年を振り返った。
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