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異変21
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この場所はまだ良い。王都から近く、誰かの助けを期待することもできる。だが、ここから更に別の場所へ移動するとなると話は別だ。幸いなことにここにはデイガーの姿は見えないが、次の拠点にはいるかもしれない。となると、空間魔導で帝国へ飛ばされてしまう可能性は低くないように思えた。
(とにかく、ここを離れないようにしなきゃ……!)
だが、どうすればいい。この状況下で変にこの場に留まろうとすればすぐに怪しまれるだろう。ここに来て今更家に戻ろうとするなどおかしな話だ。いっそ脚が痛むということにでもしようかと思ったが、ここまで普通に歩いてきたのだから不自然すぎる。そもそも騎獣がいるのだから、それに乗せられてしまえばそれまでだ。
どうする。この敵の真っただ中で、できる限り自然に、長い時間この場に留まるためには、どうすればいい。
これ以上ないほどに頭を回転させていた少年は、ふぅ、と小さく長く息を吐いた。それから、一歩、二歩と、騎獣の方へ足を進める。そして少年は、三歩目を踏み出したその脚から唐突に力を抜いた。重力に従い崩れた身体が、湿った下草に倒れ込む。そのまま彼は、胸を片手で掻き毟るように押さえて、苦し気に喘いだ。
「キョウヤさん! どうされました!?」
焦ったような声と共に、ギルヴィスの姿をした何かが駆け寄る音が聞こえた。それを確認しつつ、少年は途切れ途切れに声を吐き出す。
「ッ、ぅ、……む、ねが……!」
「どうされたのですか!? もしや、何かご病気が!?」
そんなものある訳がない。少年は至って健康体だ。自分でもなんて陳腐な発想なのだろうと思うが、これよりも良い案が浮かばなかったのだ。だがどうやら、思った以上に効果的なようである。
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