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水の呪い7
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王が宣言した瞬間、王の周囲で炎が膨れ上がり、荒れ狂う渦となって女へと奔った。だが、異形の敵は、その業火をも爪で切り裂いてしまう。
「さすがは火の国の王! 火霊に主導権を明け渡すたぁ、なかなか他じゃ拝めないようなことをしてくれる! だけど良いのか? 大方死にかけの火山にも火霊を回しているんだろう? その魔力、いつまで保つのか見ものだな!」
女の言うとおり、王の一手は常人ではそう成し得ない策であった。精霊に魔法の全権を明け渡すというのは、すなわち、己の魔力を丸ごと差し出し、好きに使えと言っているようなものである。その場合、権利の返還を指示するまでの間、火霊の動きの全てを自身の魔力で賄うことになり、通常の魔法と比較すると魔力の消費が尋常ではなくなるのだ。故に、このような暴挙に出られる人間はほぼいないと言って良い。これは、莫大な魔力を持ち、火霊との相性が極端に良いこの王だからこそ成し得た一手だった。
「魔法も剣も効かぬのならば、いっそどちらかに集中した方がやりやすい!」
叫んだ王が、向かってきた爪の軌道を剣で僅かに逸らし、女の喉元目掛けて強烈な突きを繰り出す。逸らしきれなかった爪が王の肩を浅く裂いたが、その切っ先がぶれることはない。
今度こそ完璧に捉えたと思われたが、女は驚異的な反応速度で王の一撃を躱し、隙が生まれた脇腹に爪を突き立てようとした。一方の王は、突きを外したと察した瞬間に次の攻撃に転じていた。突き出した剣をそのまま横に振り、敵の首を落とそうと刃を走らせる。それとほとんど同時に、女の爪が王の脇腹に食い込もうとしていた。
が、女の爪を、凄まじい勢いで噴き上がった炎が爆風と共に押し返した。王の危機を察した火霊が助けに入ったのだ。
「風霊!」
風霊の補助により更に速度を増して振り抜こうとした刃は、しかし首と剣との間に差し込まれた腕によって、またもや止められた。だが、咄嗟のことにさしもの相手も構えきれなかったのだろう。風の力を借りて加速した一撃を受け、敵の身体は大きく横に弾き飛ばされた。同時に、王の背後で無数の火球が生まれ、女に向かい追撃を加えんと放たれる。
「火は効かないって判ってんだろうがァ!」
そう吠えた彼女は、大きく右腕を振りかぶった。腕を覆う鱗が肩まで侵食し、鋭利な爪が更に肥大化する。そして彼女は、咆哮と共にその異形の腕を打ち下ろした。
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