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窮地1
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共に行こうと差し伸べられた小さな手に、少年は己の背中を冷たい汗が伝うのを感じた。
ここでアンネローゼと名乗った少女の手を取るわけにはいかない。だが、どうすれば良い。どうすればこの状況から逃れられるだろうか。
鈍い頭を必死で回転させるが、良い案など浮かぶ筈もない。
「だーかーらー、怖がらないでって言ってるじゃない。あんまりびくびくされると気分が悪いわ。苛めたくなっちゃう」
怯えきった表情で視線を彷徨わせていた少年は、アンネローゼの言葉に思わず肩を震わせた。どうやら彼女はあまり我慢というものが得意ではないらしく、少年の態度に判りやすく苛立っているようだった。
「お、畏れながらアンネローゼ様、エインストラ様には危害を加えるなと、デイガー様よりご命令が、」
「うるさいわね! 知ってるわよ! でもそれって血が勿体無いからでしょう? だったら骨折るくらいなら問題ないわ!」
叫んだアンネローゼが、少年の腕を引っ掴む。小さな手は、しかしとても少女とは思えないほど強い力で、少年の手首をぎりぎりと締め上げた。
「っ……!」
「ね、エインストラ様、一緒に来てくれるわよね? エインストラ様だって痛いのは嫌でしょ? だったらいちいち抵抗しないでくれる? 私、か弱い乙女に見えるかもしれないけど、ウロ様に貰ったお薬飲んだからとっても強いのよ?」
徐々に強まっていく力に骨が軋み始め、少年の顔が痛みで僅かに歪んだ。それでも、彼が頷くことはない。
デイガーもそうだったが、帝国の人間はおそらく、少年のことを家畜に等しいものとして見ている。彼らからすれば、少年が持つのだろう幻想種の血が得られればそれで良く、そのために少年を殺すわけにはいかないから生かしているだけなのだ。そんな彼らの国へ連れて行かれたなら最後、鎖に繋がれ血を搾り取られる日々が待ってるだけだろう。
明確な抵抗はないが大人しく従うようにも見えない少年に、アンネローゼがあからさまに不愉快そうな顔をした。
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