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窮地12
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「ひぐっ、わ、わたしの、あし、あし……」
「ああ、そのままじゃ死んじゃうか。火霊、焼いて止血して」
ヨアンの言葉を受け、火霊が宙で小さく炎を弾けさせる。赤の王のそれと比較すると随分と控えめな炎は、しかし十分な熱量を持って少女の傷口に纏わりついた。
「あああああああああ!!」
肉が焼かれる痛みに、アンネローゼが喉も枯れんばかりの絶叫を上げた。だがヨアンが気にした様子はなく、それどころか彼は満足げに頷いた。
「良かったね、取り敢えずこれで失血死することはなくなったよ。じゃあ安心したところで、知ってること話して。全部ね」
そんなことを言われても、アンネローゼは経験したことのない痛みにそれどころではなく、問い掛けに答えることなどできない。
「人の話聞いてる?」
首を傾げたヨアンが、アンネローゼの小さな手を取って、その小指を握る。
「折るよ」
宣言すると同時に、ヨアンの手が、まるで小枝でも折るかのような気軽さで細い小指をぽきりと折り曲げた。
「いぎぃぃぃぃぃぃッ!!」
「さっきからうるさいなぁ。いい加減静かにしないと舌引っこ抜くよ? あ、でもそうしたら喋れなくなっちゃうか。困ったなぁ」
困った困ったと言いながら、ヨアンの手が今度は少女の薬指に伸び、またもやなんでもないことのようにその骨をぽきりと折った。更なる痛みにアンネローゼが再び絶叫するのを見ながら、『グレイ』は心底から『鏡哉』に主導権を返さなくて良かったと思った。『グレイ』はちよう以外に興味がないからこそ、こういう場面に遭遇してもそこまで動揺することはない。だが、『鏡哉』だったならばそうはいかないだろう。あれはこういった凄惨な現場は苦手なのだ。
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