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蜃気楼の攻防5
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だが、魔物の方もそれを大人しく見ているだけではない。自身が生み出した幻たちが次から次へと倒されていく様子に思うところがあったのか、残った貝たちは再び一斉に殻を開け、またもや幻を投影し始めた。
(くっ、幻影の貝すらも幻を生み出せるのが非常に厄介だ。俺が倒す量よりも、向こうが幻を投入する量の方が圧倒的に多い)
この状況を打破する方法があるとしたら、本体を仕留める以外にはないだろう。しかし、幻たちはどれも精巧で、カリオスには本体かどうかの区別などつけられない。
そこでふと、カリオスはエインストラのことを思い出した。
天ヶ谷鏡哉がエインストラの血を引いている可能性は非常に高い、という話は、赤の王から円卓の連合国の王たちに対して報告されている。そして、金の国の王であるギルヴィスの信頼が厚いカリオスもまた、王からそのことを知らされていた。
(エインストラの血縁ということは、この子ならば本体を見破れるということか……?)
エインストラの瞳は万物の真実を見抜くと言う。ならば、幻に紛れた本体を見抜くなど造作もないことだろう。そうなれば、この状況を一気に打破できるかもしれない。
そう考えたカリオスは、腕に抱えている少年に視線を落とした。
「キョウヤ殿。正直に申し上げて、今の状況は非常に厳しい。本体を叩かないことには、こちらがジリ貧になるでしょう。そこで、無理を承知で申し上げます。どうかその右目で、エインストラの目で、この中から本体を探し出しては頂けないでしょうか」
カリオスが言ったそれは、間違いなく現状における唯一にして最善の策だ。そして彼には、この方法であれば確実にこの場を切り抜けられるという自信があった。だが、
「……え、あ、あの、ぁ、」
右目、と言われた瞬間に、少年の表情が目に見えて変化した。顔面が蒼白になり、何かに怯えるようにその身体がカタカタと震え出す。
無理もない話だ。少年にとって右目を晒すことは、死と同義と言っても過言ではないくらい恐怖すべきものなのである。いや、もしかすると、ある種死よりも忌避すべき事態とも言えるのかもしれなかった。だが、それでも彼は死ぬわけにはいかない。
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