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ウィルはエドガーにキスをされた左手の甲を見つめ、ため息をついた。
「もう一度会いたい」と願ってはいたけれど、どこかで「もう二度と会えないかもしれない」とも思っていた。
初めて出会ったあの日から、毎日でも出かけたいくらい、心はざわめいていたが、御主人様が心配で屋敷を離れられなかった。
それが最近ようやく容体がよくなったおかげで、一ヶ月ぶりにオペラ座前へ花売りに出かけた矢先だった。
まさか、自分が絵のモデルになるだなんて。
再開の喜びもつかの間、話が進むにつれて怖くなってしまった。
本当は嬉しい。心高鳴るエドガーと、少しでも長く一緒に居られる時間があることが。でも、自分は貧しい使用人。あまりにも身分が違いすぎる。秀でた容姿でもないし、正直モデルが務まるのか、不安でしかない。
それに、自分は男だ。たまたま商売のため、少女の格好をしていただけ。中身は見習い庭師の少年である。エドガーの言う「美しきマドモワゼル」ではない。
(でも、ロベール様は最近絵が描けない、と悩んでいらっしゃったし…)
自分がその手助けになれば、些細なことでもいいから協力したい。
そう思う反面、自分の欲望のために、副業の花売り業をやめていいのか、とも思う。
床に伏せる実家の祖父と、体調が良くなってきたが、またいつ悪くなるかわからない御主人様。どちらも大切な人たちである。その人たちを差し置いて、欲に従ってしまったことへの後ろめたさが湧いてくる。
「はぁ…」
ウィルは左手の甲を撫で、もう一度ため息をついた。
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