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side結城 蛍汰
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「じゃあね、優真。また後で」
「お、おう」
ぎこちない返事を確認した俺は、手をふって優真とは反対側へ足を向ける。
遅刻ギリギリに来たものだから、周りには誰もいない。
廊下を歩く足音がはっきりと聞こえるほどの静けさに、口元が緩んだ。
ガラガラと教室の扉を開ければ、視界にうつったクラスメイトたちは一瞬でこちらを向く。
「おはよう結城くん!」
「けいたぁっ、おはよぉ」
「よっ、蛍汰」
「おはよー」
「おはよ」
ニコリと微笑んでから、静寂が支配する廊下と騒がしい教室の境界線を飛び越え、俺は自分の席へと向かった。
チラチラと感じる視線に一々反応してあげる必要はない。
クラスの女子たちが話をする機会を伺っているのは知っているけど、生憎俺は、彼女たちが思っているほど紳士的ではない。
「よぉ、今日は随分遅えじゃねぇの」
「うん。つい、ね」
前の席の八重が嫌味ったらしく口を開く。
きっと彼は、俺が不機嫌に返事を返すと踏んでいたのだろう。
優真を思い、口角をあげ答えた俺に、彼は驚愕の色を浮かべていた。
「きも..ニヤニヤしてどうしたんだよ」
「別にどうもしてないよ?」
「嘘つけ、口元ゆるゆるじゃねえか」
分かってはいても、遅刻ギリギリに登校する羽目になった原因を思い浮かべてしまえば、口元が勝手に緩んでしまう。
「今みた!?かっこいい!!」
「はうっ。微笑んだ顔も王子様!」
「きゃーっ」
少し離れた場所から控えめに聞こえる黄色い声。
八重は彼女たちを横目で見てから、重いため息を一つ吐き出した。
「はぁ、また女子共が王子様の虜になってますけど?」
「ふふ、俺には関係ないよ」
「ははっ、殺してぇ」
躊躇いもなくばさりと切り捨てた俺に、八重は口角を引きつらせながら青筋を立たせた。
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