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教室にて
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「おはよう、八重」
椅子に座る彼の背後からいきなり話しかけても驚かれない。
多分、廊下でキャーキャー騒いでいる子たちのおかけで教室に入る前から俺の存在はバレていたんだろう。
特に反応を見せることもなく、八重は横目で俺をみて、再び視線を前へ戻す。
「...なに、もう悩みごとは消えたのかよ」
「うん。そんなに分かりやすい?」
「そーだな。気持ち悪いくらい清々しい顔してんな」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「けっ」
八重の挨拶とも言える嫌味を笑顔でかわす俺が気に入らないのか、八重は机に頬杖をついた。
「で、もう自覚済みなのかよ。優真ってやつのことは」
八重の言う自覚とは、多分俺の優真に対する気持ちのことだろう。
それについては嫌っていうほど自覚してる。
...ぜんぜん嫌じゃないけど。
「うん。優真と食堂で会ったとき、八重が言っていた言葉の意味もわかった」
「あ、そう。まぁ頑張れよな。あの一年坊主も大変だろうけど」
「..なにが?」
「2、3年はお前に同室者が現れたってだけで嫉妬してんだ。それが蛍汰の想いびとなんてバレた日には妬み殺されるぞ」
現実を突きつけるような八重の言葉に、ぴくりと眉間にしわがよる。
殺されるなんてことはないだろうけど、女って生き物が怖いのは重々承知している。
優真に何らかの矛先が向いてしまうことなんてあっちゃいけない。
それでも、彼女たちの妬みが優真に向くことは、ある意味分かりきったことだ。
「昨日も家の前まで来てたしね」
「まじかよ。行動速えなおい」
「牽制なら早めにしなくちゃ..」
「ははっ、怖えな」
「何が怖いんだよ」
「何にも執着してこなかったお前が、何かに執着するとどうなんだろうってな」
まぁ、人間ぽくて面白いけど。
そう言って嫌味ったらしく笑う八重。
俺も自分のこと性格悪いと思うけど、八重だって大概だと思う。
「それより今は歓迎会を切り抜けることを考えろ」
「その話は断ったって言っただろう?」
「あの馬鹿がそんな簡単に諦めるわけねぇだろ」
あの馬鹿。
その単語で頭に浮かぶ人物はたった一人。
...本当に、俺のまわりにはろくな奴がいない。
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