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閑話;山地優征という男1〜モブ視点〜
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入学式からやたらと女に囲まれてる奴がいた。
第一印象は、とにかくモテそう、そんな感じだった。
それからしばらく月日が経って、そいつはやっぱり女子にモテて、入れ食い状態。
女の子を食ってはポイ。
なのに世の中は不公平で、顔さえ良ければ女の子は寄ってくる。
今だって、女の子に告白されて
「あー……俺、いま彼女いるんだ……ごめん、君とは付き合えない……」
って。どんだけ告白され慣れてるんだ……
「………そっか、ありがと……」
告白した女の子がうつむく。
すごく可愛い子だなあ……
うつむく女の子に山地は顔を近づけて
「また機会があれば……ね?」
なんて言った。なんだこの色気。高校生とは思えないぞ。
「…………っ!」
もう目も当てられないほど真っ赤になった女の子は、パタパタと走り去っていった。
一部始終を見届けた俺が教室に戻ると、しばらくして山地ももどってきた。
山地が教室に戻ってくると、山地がいつもつるんでる男子が集まってくる。
俺とはジャンルの違う、派手な集団だ。
そんな中で山地だけは、周りに流されて制服を着崩したり、授業をサボったりせず、まさに優等生、って感じがしていた。
「優征、お前またフッたんだってー?あの子可愛いのにもったいねー!」
ギャハハ、と下品な笑い声が響く。
「…………可愛かった?タイプじゃなかったからわかんないや。」
山地は、あんな可愛い子が可愛くないんだったらこの世に可愛い子なんていないだろ!!って周りが言っても、ハハと苦笑いするだけだった。
「そう言えばお前のタイプって聞いたことねーぞ!教えろよ〜〜」
大声でそんなことを周りが言うから、教室中が山地の返答を聞こうと耳をそばだてていた。
「また時間があったら。」
山地は好きな女の子の好みさえ、人に教える気は無いらしい。
逆にそれが周りの好奇心を煽るのだろう。
山地が教室から出て行くと、さっきの会話を聞いていた女の子たちがお喋りを始めた。
「山地くんって好きな子いるのかなー」
「彼女はコロコロ変わるからいないんじゃない?」
「どうだろ、今までの彼女見てたら可愛いなら誰でも良さそう。」
「じゃあ今度山地くんに告白してみようかな〜」
「今は彼女いるから無理だってー!」
好きな子=彼女、ではないと言うのは、俺にとってすごく違和感があったが、この子たちの間ではそうではないようだ。
放課後、俺は忘れ物を取りに教室へと向かった。
下校時間までギリギリだったから猛ダッシュしていると、教室から出てきた人に思い切りぶつかった。
「わっ、あ、大丈夫?」
そう言って恐る恐る顔を上げると、
「俺は大丈夫。君は?」
すごく近い距離に山地の顔があった。
「大丈夫……ありがとう…」
「そう、なら良かった。お互い気をつけよう。」
なんだかドキドキしたから、イケメンは本当にずるい。しかも優しいから反則だよなあ…
家に帰ってカバンを整理すると、見覚えの無いものが入っていた。
…なんだこれ…………
めちゃくちゃ上等そうな……手帳…?
持ち主を確認するために中身を見る。
う、わ、こ、れ…………
開けた瞬間名前を発見した。
山地のやつだ!!!
さっきぶつかった時か…………
いや、もう、名前見つけたから他を見る理由が無いから見なくていいんだけど、気になるというか、なんと言うか………
指が勝手に動いた。
中を見るとやっぱりリア充らしく、予定がギッシリ詰まっている。
『彼女とデート』
『友人とカラオケ』
『彼女とデート』
『慎也と勉強』
『親と食事』
うわあ……ほんとギッシリだな……
羨ましい!!!!
でも……
なんだこの違和感…………
あ………
『彼女とデート』って普通、彼女の名前書くよな?
『友人とカラオケ』とかもそう。
他の予定も全部そんなだから『慎也』という名前だけが浮かび上がる。
『慎也』って誰だ。
まあ、いい、とりあえず明日返そう。
なんて思いつつ、俺は寝ようとした。
でも気になって眠れないうちに、もう次の日になっていた。
「山地、あの…さ………」
終礼が終わり、珍しく一人でいる山地に声をかける。
「どうかした?」
「昨日ぶつかった時に俺のカバンに入ったんだと思うんだけど、これ山地のか?」
「ああ!探してたんだ、ありがとう。」
「いや、もっと早く返せればよかったんだけど…」
「ううん、見つかっただけで十分。」
「じゃ、また。」
こんな感じの無難なやりとりだけを交わして、俺は山地に手帳を返すというミッションをクリアしたのだった。
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