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厳兜とオレ
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「あんなおどおどして、ひよってるヤツのどこがいいわけ?」
女の子なら可愛いと思うけど…、と厳兜は、去っていった天馬の影を視線で追う。
「頭いい」
「そんだけ?」
オレの即答に、被せるように厳兜の声が降る。
「顔が好き」
「もっと内面的な何かは、ないのかよ?」
呆れるような音で放たれる厳兜の言葉に、オレは煩わしさを露にする。
「じゃ、お前は? 彼女のどこが良いわけよ?」
喧嘩腰に放ったオレの声に、厳兜はにやりと頬を緩めた。
「揉み心地のいいおっぱ…」
「お前の方がゲスいだろ」
指をわきゅわきゅさせる厳兜に、オレは軽蔑の眼差しを向け、罵った。
オレの一言に、厳兜は、ははっと軽い笑い声を零す。
「ウソウソ。優しいとことか、理解力のあるとことか…、上げたしたらキリねぇわ」
空へと視線を向け、彼女の姿を思い起こしながら、言葉を紡ぐ厳兜に、呆れの溜め息が漏れ落ちる。
「結局、てめぇが惚気たいだけかよ」
…オレと厳兜は、付き合っている訳じゃない。
厳兜には可愛い彼女がいるし、オレはオレで……天馬が、好き。
厳兜が、オレの恋人のフリをしてくれているだけなのだ。
中学2年の頃、オレは生徒会の書記をしていた。
生徒会長に、恋をしていた。
その頃のオレは、ここまでオープンではなかった。
生徒会長に告白したオレ。
想いは実らなかったが、生徒会長の態度は変わらなかった。
ただ、その告白をこっそり見ていた生徒会長と同じ1つ上の女生徒が、的外れな怒りをオレに向けた。
オレがいるから、自分が相手にされないのだと、訳のわからない因縁をつけられたのだ。
ホモでビッチなオレは、男なら誰でもいいなんて噂を流され、知らない先輩に犯されそうになった。
そこを助けてくれたのが、厳兜だった。
厳兜は、周りの噂など全く意に介さない。
「お前、そんな軽いヤツじゃないだろ。てか危なっかしいから、俺の傍に居ればいいじゃん」
惚れるなよ? と、冗談めかした笑みを浮かべる厳兜に、オレはその好意を突っ跳ねた。
「いいよ。オレは、独りでいい。……お前までホモだと思われたら困るだろ」
「別に。男が好きだろうが、女が好きだろうが、二次元だろうが、無機物だろうが……好きなもんは、好きでいいじゃん。そう思われたって、俺はなんも困らんし」
気遣いは簡単に一蹴され、その頃から周りになんと噂されようと、厳兜はオレの傍に居る。
するりと腰を落とし、手持ち無沙汰に、足許に生えていた雑草をぶちぶちと抜く。
「早くあいつ落とせよ。そしたら俺もお前のお守りしなくて済むし」
面倒だという雰囲気を醸しながら紡がれた言葉も、厳兜の本心じゃないコトぐらい察しがつく。
厳兜は、本気でオレを応援してくれている。
「わかってるよ。わかってる……」
もう少し押せば、天馬はオレに、靡きそうな気もする。
…でも、本当にいいのか?
だって、天馬はきっとノーマルだ。
ただオレの術中にハマっただけで、普通に女の子と恋愛できる。
オレの想いを成就させるために、騙すように手に入れるのは……、ダメ、だろ。
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