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そのご12。sideーs
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片付けにもきりがつき、
送るものも送った後の味気ない家。
もうすぐ来るであろう訪問者を待つには
遊び道具の一つもなくて退屈だ。
迎え…行くかな。
別にもう、変に意地を張る必要もないだろうし。
家を出て、一歩、二歩と外の世界に足を踏み出せば
途端に啓斗君との思い出が頭のいっぱいに広がった。
初めて出会った日
再び会えたその日の夜
もう一度、会いに来てくれた日
俺が突き放して逃げた日
それからも、ずっと俺を探してくれていて
また、会うことができて。
はじめは俺の意地で妙な関係にもなっちまったけど
確かに想い合えた瞬間は本当に幸せで。
それまで生きてきた世界が嘘みたいに
色を持って、鮮やかになった。
啓斗君の知らなかった部分を学校でもたくさん見ることが出来た。
啓斗君は笑っちゃうくらい字が汚い。
上履き用のスリッパの裏に画鋲か何かを仕込んでいるらしく、
歩くたびにカツカツと安いヒールでも履いてんのかって音が鳴る。
俺以外の授業だと、いつも窓の外を眺めるか
時折頭を揺らしながら居眠りをしている。
そして、すごく…独占欲が強い。
勿論、無いわけじゃなかったし2日に一回くらいのペースでは居たんだけど
俺に告白してくるやつ。
でも、この俺にしては少なすぎんじゃねえかって少し不思議に思ったり、なんならちょっと凹んでたりしたんだけど
『菅沼先生が…もうすぐ結婚するっていうのは噂で聞いたんですけど、でもやっぱり先生に一目惚れしちゃって…!!』
『え?あ…あの、俺が結婚する…というのは…?』
『違うんですか?啓斗がそう言ってたので私てっきり…。』
…なんて会話を生徒と交わしたのは1回や2回ではない。
ほんっと何なんだよ。
俺のタイプとは真逆なんだよな、啓斗君って。
顔がいいのは大前提としても
俺より頭良くて、大人で、余裕あって俺のこと縛ったりしなくて、出来れば年上…っていう
アバウトながらに俺の理想のタイプってんはちゃんとあるんだけど。
見事に全く一致項目なくて笑えるわ。
少し歩いて、ちいさな公園のベンチに腰を下ろす。
遊具や立派な池もないので
週末の昼下がりだというのにそこに人気はない。
鳥の囀りを聞きながら
すうっと目を閉じて乾いた風を感じた。
と、遠くからバタバタとこの自然にはそぐわない
騒がしい足音がする。
騒がしいと言ってもその音は1人分だし
小さい子が履いているようなキュウキュウ音の出る靴ってわけでもない。
走り方も至って普通。
でも、その音にいち早く気づくようになってしまったのは
「菅沼さん!!お待たせ!」
啓斗君が俺のもとへ来てくれるのを
いつだって楽しみに待っていたからだろうな。
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