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愛し、焦がれ
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女に生まれてたら、どれだけ良かったんだろ。
時々、いや、毎日思う。
目軽さんが好きで、しょうがなくて。
でも俺は男で。
恋愛対象外。
告る事は絶対ないよね。
『ラブさーん、今日は何のゲームします?』
『そーですね、何しましょうか』
さっきスカイプで目軽さんと通話を始めて、十分。
この何気無い会話に俺はいつも幸せを感じてる。
目軽さんの落ち着いた声、楽しそうな声、全部好き。
目軽さんもこんな気持ちになってくれないかな。
そんなありえない願望抱いてもしょーがないんだけどさ。
『マイクラでもやりますか?』
『あ! 俺、マイクラでやりたかったのがあったんでした』
目軽さんの提案にやりたかったのを思い出す。
『自分なんでも大丈夫なんで、マイクラやりましょうか』
目軽さんの笑った声が聞こえて、思わずトキめいてしまう。
それは反則!
云っちゃダメだって分かってるけど、つい口走ってしまいそうで怖い。
マイクラ始めたけど、全然集中出来なくてミスとかばっか。
『あ、ラブさん、後ろ危ないですよ』
『え、…うわっ…! あー死んだー…』
『だから言ったのに』
『言うのちょっと遅いですよ! 結構ギリギリで言いましたよね?』
『あ、バレました?』
バレバレですよ、と答えながら元いた場所へ向かうためマウスを動かす。
なんだかんだで、二時間ぐらいやってて。
そろそろお開きという事でゲームは終了。
『じゃあ、僕そろそろ寝ますね』
寂しいけれど、そろそろスカイプも切らなきゃと自分から切り出す。
目軽さんに言われる方がすごく寂しいし。
『はい、お疲れ様でした。あ、ラブさん』
『どうしました? 目軽さん』
目軽に引き止められて、内心ドキドキしながらバレないように返答をする。
するとちょっと改まった感じの目軽さん、一瞬何を言われたのか分からなかった。
『あのですね、今度どっか行きませんか?』
『え、あ、いいですね! 出かけましょ!』
理解した瞬間、食い気味に答えてしまった。
ちょっと恥ずかしい……変に思われてないかな?
でも遊びに誘われて嬉しくない訳ない!
『いつ空いてます?』
『ちょっと日が空いちゃうんですけど、今月末の火曜日空いてますよ』
『あ、本当ですか? 自分もその日大丈夫なんで、その日にしましょうか』
特に気にされる事もなく、トントン拍子で日程と時間、場所が決まった。
通話を切った後も喜びが冷めず、全然眠れなかったのは言うまでもない。
それから4日後の夜。
急に目軽さんからラインがきた。
ラブさん今通話しても大丈夫ですか?
との内容。
目軽さんから連絡が来る予定はなかったので、内心嬉しくて飛び跳ねてしまいそう。
すぐに返事を返す。
全然、通話大丈夫ですよ。
と返せばすぐに電話が掛かってきた。
『あ、ラブさん、すみません、急に連絡しちゃって…』
『大丈夫ですよ、それよりどうしたんですか?』
すぐに電話を取ったら、妙に歯切れの悪い感じ。
なんか嫌な予感がした。
『すみません、今月末の火曜に予定してたお出掛け、ちょっと都合つかなくなってしまって…』
ああ、当たってしまった。
やっぱり。
すっごく楽しみにしてた分、ショックが大っきくて。
しかも目軽さんの隣から女の人の声が聞こえてきて、それを掻き消す勢いでまだ喋り途中の目軽さんを遮って俺が喋り出してしまった。
勝手に口が動いてしまった。
『分かりました! それはしょーがないですもんね! また今度にしましょ!』
『自分から言ったのに本当すみません。必ず埋め合わせします。では、失礼します』
プツッと切れた通話に堪えてた涙が溢れてきた。
そうだよね、所詮こんなもんだよね。
だって俺と目軽さんはネットでの友達だもん。
それ以上でもそれ以下でもない。
そもそも恋愛対象外で。
仕方ない事なのに、堪らず涙が溢れた。
それから連絡という連絡をする事もなく、一ヶ月が経った。
そろそろ動画上げなくちゃいけないし、目軽さんに連絡をしなくちゃな。
でも目軽さんに連絡を入れる気にもなれなくて、ダラダラしてた。
そしたら、不意になる電話。
目軽さんからで、掛けてきてくれたことが嬉しくなってすぐに出てしまった。
『あ、目軽さん、お久しぶりです!』
『ラブさんお久しぶりです! 全然連絡出来なくてすみません。色々ゴタついてまして、やっと落ち着いたんで、遅くなってしまったんですが埋め合わせをと思いまして』
連絡しました、といつも通りの口調の目軽さん。
懐かしい気持ちと落ち着く感じ。
ずっと恋しかった声、相手。
『いつにしますか?』
『そうですね、急なんですが明日とか予定空いてますか?』
『大丈夫ですよ、空いてます』
急にトントン拍子で決まっていくお出掛け。
『じゃあ、明日のお昼前にしましょうか。ラブさん、行きたいところ考えといてくださいね』
『え、僕が考えるんですか?』
うわーどうしよう、と漏らせば目軽さんの笑った声が聞こえた。
そんな些細な事が嬉しくて、つい笑みが零れた。
楽しみすぎて寝れないかも。
案の定寝れなくて、ちょっと寝不足気味。
ギリギリの時間に目が覚めて、慌てて準備して家を出た。
家から駅が近かったから、待ち合わせ場所を駅にして良かった。
息を切らしながら、待ち合わせ場所に着くともう目軽さんは待ってて顔がニヤけるのを感じた。
はっ、駄目駄目ニヤけてたら変に思われる。
引き締めていかなきゃ。
「目軽さん、お待たせしました。ちょっと遅れてしまってすみません」
「お久しぶりです、ラブさん。自分がちょっと早く着きすぎただけですから大丈夫ですよ」
目軽さんのところまで駆け寄って言えば、柔らかく笑う目軽さん。
その表情に胸キュンしてしまう。
顔を見られただけで幸せ。
「行きましょうか、ラブさん」
「はい、行きましょう!」
目軽さんに促されて歩き出す。
あ、会える事に気を取られすぎてどこ行くか考えるの忘れてた。
「行きたい場所決めました?」
「うぇ、あ、えーっとですね…」
それを察知したのか、目軽さんに速攻で聞かれる。
驚きすぎて間抜けな声が出た。
めっちゃ恥ずかしい。
「もしかしてまだ決めてないんですか?」
「はい、すみません」
誤魔化す事も出来ず、素直に謝る。
呆れられちゃったかな。
「謝らないで下さいよ。じゃあとりあえず、ご飯食べましょうか。それから決めましょう」
「はい、そうしましょうか!」
笑顔のままで言ってもらえて少し安心する。
「この間は予定をキャンセルしてしまってすみません」
突然、目軽さんが真剣な顔になって改めて謝罪をしてきた。
あの時は落ち込んだけど、でも今こうして会ってるから文句もない。
「全然大丈夫ですよ。用事って急に入っちゃうもんですよね」
「そうなんですよね。色々と揉め事が起こっちゃって…。もう解決したんで大丈夫なんですけど」
「どんな揉め事だったんですか?」
目軽さんの疲れ切った表情につい聞いてしまった。
「まぁ、あれです。ラブさんには関係ない事なんで大丈夫ですよ」
話したくなかったみたいだ。
誤魔化すように笑って言われた。
なんだかそれが悲しくて。
俺は蚊帳の外の話だから関わってくるなって事なんだと思う。
でも俺…。
目軽さんの事好きだからさ、知りたい。
力になれるなら力になりたい。
でもそれは迷惑な事なのかな。
「関係ないとか言わないでください。好きなんです!」
口にしてから、やらかしてしまった事に気付いた。
勢いで言ってしまった。
「それっ…」
「目軽! ここにいたのね」
目軽さんが口を開いて何かを言いかけた時、突然女の声がそれを遮った。
「なんで、ここに…」
「もうっ、今日は半年記念でデートするって言ったじゃない!」
ビックリしてる目軽さんを特に女は気にしてる様子もなく、絡みつくように腕を組んだ。
デート?
半年記念?
それって何?
目軽さん彼女いたって事?
それって俺に希望はないって事で。
揉め事も彼女との喧嘩だろう。
そうしたら関係ないって事もよく分かる。
今、俺は邪魔なんだ。
「僕、用事思い出したんで帰りますね! また連絡してください!」
一気に捲し立てて、その場から逃げた。
目軽さんに名前を呼ばれたけど、振り向く事は出来なかった。
何で言っちゃったんだろう。
報われない恋。
叶わない想い。
呆気なく散ってしまった。
もう目軽さんには会えない。
ただただ悲しくて涙が零れた。
(諦めないといけないのは分かってる)
でもどうやって?
end.
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