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「川島が起きてる、珍しー。」
狭くはない講義室は、ほとんどの席が埋まっていて、
そのほとんどの生徒が前方の講師とホワイトボードを注視している中、
俺の左隣に座った駒場は、頬杖をついてこちらを見ながらそう呟いた。
「いつも起きてるっつの。」
「嘘つけ。八割寝てるかスマホいじってるくせに。」
シャープペンで俺を指しながら言うそいつを睨んだ。
「名前なんだっけ、あの人。あの人に何か言われたんだろ?どうせ。」
「……っるせぇな、どうせって何だ、どうせって。」
名前は出されなくても、それが浅科さんを指している事は充分伝わった。
ちょっと前に、浅科さんとの事を悩んで血迷った末、
俺は一緒に飲みに行った場で、こいつにそれを相談した。
後になって思えば本当に血迷ってたとしか思えないし、悩みすぎてどうかしていたと思う。
それでも、こいつの無関心な態度は心地よくて、
状況は結果的に良い方に転んだ。
「あの人もよくお前みたいなのと〝本気〟で付き合ってるよな。」
「どういう意味だそれ、ケンカ売ってんなら買うぞ」
「そういうのだよ、そういうの。導火線は短けぇし、性格はめんどくせぇし。」
そんなもの、言われなくたって自分が一番分かってる。
「まぁ、当人同士しか分かんない事もあんだろうけど。」
「駒場ってたまにまともな事言うよな。やめろ、気持ち悪いから。」
「うるせぇな、おま」
言いかけた駒場が、
前方のホワイトボードの前で、こちらを見ながら咳払いをする講師の視線に気付いて、そこで俺達の会話は終了した。
「完全に睨まれたわ。」
「っ、あっはは、お前の声がデカいからだろ」
悪びれもせずにそう言ったのが可笑しくて、思わず吹き出した。
俺と駒場は、ろくに内容を聞きもしないまま最終の講義の時間をやり過ごして、
正面入口まで続く通路を並んで歩いていた。
「川島、まっすぐ帰んの?どっかで飯食ってかねぇ?」
「帰る。用あるから。」
「あっそ。いいねぇ、〝用〟がある人は。」
明らかに含みのある言い方に、
駒場を睨んでも、当の本人はどうでも良さそうにスマホをいじっていた。
無関心そうにしてる割に勘が鋭いっていうか、よく見てるっていうか
察しが良すぎて気持ち悪い。
「川島っ!、…かーわしまー!」
そんないつものくだらないやり取りをしながら歩いていたら、
後ろから俺を呼び止める、聞き慣れない声が聞こえた。
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