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笑えよ
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黄瀬くんが大怪我をしたと聞いた。
監督とキャプテンが、たまたま知り合いのお見舞いにきていたら、救急車で運ばれてきたんだそうだ。
僕たち誠凛は、急いでその病院に駆けつけました。
黄瀬くんや海常のみなさんは、同じ部屋にいるようです。
火神くんがいうに、目に包帯を巻いたひとや、両腕や両足を吊られているひとがいるようです。
なにがあったのでしょう?
「黄瀬くん……」
恐る恐る、声を出しました。
すると、掠れた声が聞こえてきました。
聴覚が異常に発達してきている僕だから聞こえたのではないかと思えるほどの、幽かな声。
「黒子……」
黄瀬くんでした。
火神くんに押されて、黄瀬くんの方に近づきます。
火神くんは少し躊躇っていましたが、僕がどうしてもと言ったのです。
「どうして、きたんスか。俺がこんな姿になったのを見て、笑いにでもきたんスか? あぁ、でも、その目じゃ見えないっスよね。あはははは」
「黄瀬、てめっ……!」
火神くんが怒鳴ろうとしましたが、止めました。
僕は、そっと、黄瀬くんの手に触れます。
「体、大丈夫なんですか?」
「全治五か月くらいじゃないっスか? バスケは、リハビリすればできるかもってさ。残念スか? 俺からバスケを完全に奪えなくて。ざまあみろっスよ」
「バスケ、できるんですね? よかった……」
黄瀬くんの手を、両手で包むように握る。
「黄瀬くんは天才ですから。その力がなくならなくてよかったです。いつかきっと、バスケ界をもっと盛り上げてくれるであろうキセキの世代が、欠けてしまわなくて、本当によかった。……よかった」
リハビリは辛いでしょうけど、きっと黄瀬くんなら、乗り越えてくれるだろうから。
そうしたら、またキセキのプレーが見れるだろう。
音声だけだけど、きっと……いや、絶対に感動してしまうのだろうな。
僕は一番の、キセキのファンですから。
「…………んで」
「え?」
「なんでっスか。笑えよ。笑えよ! おまえをいじめた奴なんスよ!? いじめて、いじめて、目まで奪って! 選手生命も奪って! バスケできない体のしたのに! どうして怒らないんスか! どうして……なんで……」
黄瀬くんは僕の胸ぐらを掴んで、揺さぶりながら怒鳴る。
いや、もはやそれは、叫びに聞こえた。
嘆きに聞こえた。
だから、胸ぐらを掴んでいる黄瀬くんの手に、もう一度触れる。
「理由は簡単です。僕は、キセキのことが大好きだからです」
びくりと、黄瀬くんの手が震えた。
「なんたって、キセキのファン第一号ですからね」
その瞬間、僕は久々に、黄瀬くんの前で笑った気がする。
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