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おまえさえ
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病院の、病室で、響く泣き声。
それは、桐皇選手のものだ。
もう、バスケができない体になった。
レギュラーの殆どが、再起不能。
バスケ部全員が悲しみ、泣き崩れる。
監督もどうしたらいいのかわからないようで、ただ茫然と立ち尽くす。
今吉先輩は、ギリギリ選手生命が残っている。
けれど、復活までには過酷なリハビリが待っているそうだ。
なんでこんなことになった?
誰がこんなことした?
こいつらに、こんなになるほどの罪があったのか?
俺だけでいいじゃねーか。
なんでだよ……。
そのときだ。
俺が普段使わねぇ頭で考えていると、そこにあいつが現れた。
元凶である人間。
「青峰くん!」
「テ、ツ…………」
誰かわからねぇが、黒髪の男に車椅子で運ばれてきたテツは、俺に近づくと叫ぶように言う。
「大丈夫ですか!? 怪我は!? 他の選手の皆さんは無事ですか!? 翔にぃは……」
すがりつくテツの言葉はすべて通り過ぎていき、ただ思っていたことが口から零れ落ちる。
「なんで……、俺じゃない……」
「え?」
「おまえが憎いのは俺だろうが! なのになんで他の奴らを巻き込む! 俺だけでいいだろ! なんであいつらの選手生命奪った! 見せしめかよ。俺に対する……。おまえさえ……」
俺はあいつの手を振り払い、言う。
「――おまえさえ……いなければ……っ!」
口を愕然と開くテツは、やがて力なく手を下ろすと、うつむいて謝った。
「ごめんなさい……」
怒りだそうとする黒髪を、テツは止めて帰っていった。
俺はひとり立ち尽くして、泣いていた。
傷つけたくなかったのに、また傷つけた。
二回目だ。
あのときも、そうだった。
白川があいつが犯人だとか言って、テツが知らない奴みたいになって。
そのときも、あいつの目は悲しそうに光はなくて。
いまもきっとそうだ。
でも、いまは追いかけてもまた愚痴ってしまうだけだから。
こんがらがった頭では、またなにを言い出すかわからない。
ただ、悲しかった。
俺が裏切っているんだ、テツを。
ごめん。
ごめんな…………、
「テツ…………」
情けない相棒で、ごめん。
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