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高校生雅視点 髪5
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優はハサミを手に取り、クリップで髪を数カ所留めてから
手を動かし始めた。
どうやら美容師志望というのは本気らしく、素人目に見ても上手いということがわかる。
風呂の鏡越しにハサミを動かす節くれだった手や、いつもにこやかな顔が真剣な表情に変わっているのを眺める。
こうしてみると同性でも思わず見とれる程綺麗で、
その上こんなに優しいのに、
どうして友達ができないのだろうと今更ながら思う。
、、いや、作れないんじゃなくて作らないんだろうな。
きっとこいつは疲れたのだろう。
他人に気を使って取り繕う事に。
そうして上辺の関係を築いていく事に。
優は会って間もない頃には、四六時中笑顔を貼り付けていたが、近頃はふとしたときには真顔で静かだったり、力が抜けたのか表情にもバリエーションが増えてきた。
俺の視線に気づいたのか、鏡越しに目が合う。
「なーに?もうすぐ切り終わるよー」
優が笑顔で言う。
「い、、いや、大丈夫。ありがとう。」
直視できなくて、目を逸らした。
生まれてから俺に向けられてきたのはずっと、
嘲笑とか、侮蔑とか、怒りとか、汚い欲だったから。
だから、直視できなかった。
純粋な優しさを含んだ笑みなんて、眩しすぎたから。
きっと、慣れていないだけだと、自分に言い聞かせた。
そうして気持ちから目を逸らした。
今思えばきっと、このときから、優が俺の中で占める面積は、友達の範囲をとうに超えていた。
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