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はじめまして。
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「やはり息子は暴れるんですか…」
翌朝、晩のことを魁くんのお父さんに説明するとガッカリしたような表情を見せた。
關燦が酷い対応をしていたのは魁くんが暴れるからだと信じたくなかったようだ。
もちろん暴れるからと言って薬でずっと眠らせるのは医師としてあり得ないけれど。
「飯窪」
背後から話しかけてきたのは…。
「あ、おはようございます、桐生先生…と隼人くん」
出張帰りの夫婦だ。
「挨拶が遅れました。院長の桐生です」
「あぁこれはこれは…。昨日から息子がお世話に…ゴホッゴホッ…すみません…」
「大丈夫ですか?無理のしすぎは息子さんが悲しみます…」
俺はとっさに背中をさすっていた。
少しは医者っぽくなったかな?
「ここに入院するには私が無理をしないと…。あぁいや、嫌味ではないんです。すみません」
他人を気遣う余裕すらないってか。確かに高いよねぇここ。
まぁでも、うん。2人暮らしの息子さんを大事に思う父の姿そのものだな。
「あ、あの…」
勇気を振り絞ったかのような隼人くんの声にみんなが目を向ける。
どうしたのかな。昔のことはあまり覚えてないみたいだけど何か思うことがある?
「片親…なんですよね…?だったらあの、、あれって適用されないの…?」
桐生先生を見上げながら"あれ"と指差した先には一枚のチラシ。
『母子家庭医療費免除制度』
母子家庭…。
この場合は父子家庭なんだよな…。
同じひとり親ということで通るんだろうか。
「…私が父ではなく母親だったら申請していたでしょうね」
いや………何かあったような…。母子家庭じゃなくて、ひとり親って書いてある制度が…。
「少々お待ち下さい。書類を持ってきます」
応接室のドアが閉まる寸前、『隼人、よくやった』という桐生先生の激励を浴びる姿が見えた。
「…もしかして、あのお2人が…?」
ん?
それを見た魁くんのお父さんが反応する。
「あぁ、そうです。彼は大山隼人くん。2歳から入院して、心臓疾患と精神病を患い18年の入院生活を経て完治しました。主治医は、隣にいた桐生先生です」
「あぁ…そう、でしたか…。ははは、そうですか。それはそれは…」
どうしてか、目に涙をためて嬉しそうに笑う魁くんのお父さん。
「……その、隼人くんの病状はよく知人から聞いていました。と言ってももう10年以上前なんですがね。それが、こんなに立派になっているなんて…」
どれくらい聞いていたのか。そんなことを聞くまでもなく目の前の彼は隼人くんをよく知る人だと分かった。
「それなら、アイツも報われます」
アイツ…?
「息子さんですか…?」
「あぁいえ、知人の息子です」
知人の息子…?報われる…?
隼人くんが立派になることと知人の息子にどんな関係が…………
………!?
「すみません、差し支えなければお名前教えていただけませんか?」
「え?あぁ、アイツは…ケントって言うんですよ。隼人くんと同じ相部屋にいたんですが、先生知らないでしょ?まだ若いですもんね」
……………。
「…知っています。顔に大きな傷があって……消防士になったんでしたっけ…」
「そうですそうです!あの傷、やっぱりトレードマークで覚えやすいですよね」
「……………」
あの傷は隼人くんが付けたものだ……
「あの傷、自分では誇りだと思ってるみたいで。ちびっこからは勇者の証だなんて言われてますよ」
「…え?」
「ケントはね、心の底から優しいヤツなんですよ」
……あんな怪我を負ってもなおそんな風に言えるなんて。
「ケントがね、よく話してくれたんですよ。ハヤトっていう子が苦しそうなのに何もしてあげられない、もどかしいって。親同士の関わりでね、頻繁に互いの家に泊まりに行ったりしてて。まぁ、息子が…魁がああなってからはぱったり交流は無くなってしまいましたけど」
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