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再発
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side 飯窪
「あれから隼人くん引きこもっちゃってるんですって?」
仕事帰りの久保先生が大量のビールを抱えてウチに来るのはいつものこと。
今度は何日二日酔いを続けるつもりですか。
「んー。怖かったんなら精神科病棟に行かなきゃいいだけなんだけど」
「もう2週間でしょ?ただ怖かっただけじゃないんじゃないの?」
「なのかなぁ。分かんない」
プシュッ
「とりあえず飲む?」
「明日早番だから飲まないよ。ちょっと話したら寝るね」
「そっ。じゃあいただきまーす」
くぁー!!とおっさんみたいな飲みっぷりの久保、先生。
そんなんだったら彼氏できませんよ〜。って俺彼氏だったわ。
◇
馬鹿でかいアラームに起こされてリビングへ行くと案の定べろべろに酔っぱらったであろう久保先生がお腹を出して大の字で寝ていた。
一体何時まで飲んでたの?空き缶の量エグいよ。
「風邪引きますよー」
と小声で言ったところで聞こえるわけないな。
タオルケットをかけて家を出た。
「おはようございます」
「あぁ」
隼人くんのことと魁くんのことで板挟み状態の桐生先生はしんどそう。
この様子じゃ隼人くんはまだ回復してないんですね。
「魁くんの様子見に行ってきます」
「あぁいや、俺が行くからお前は心外(しんげ)を頼む」
「分かりました」
「おつかれさまです〜」
受付嬢が数名俺たちに挨拶する中、
あの日隼人くんに、桐島先生へ書類を渡すよう頼んだ受付嬢だけは俺たちと一切目を合わせない。
隼人くんに聞いても誰から頼まれたかを言わなくて、仕方なく受付全体に不要な頼み事はするなと注意書きのメモを貼ったんだ。
そしたらまぁ分かりやすい反応をしてくれちゃって。
かと言って別に桐生先生は彼女を責めたいわけでも怒りたかったわけでもないから何も言わないでいるんだけど。
隼人くんに色々頼んでいたのは彼女だけじゃないしね。
たまたま運が悪かっただけで彼女にだけ注意するのは違うって、桐生先生も言っていた。
せかせかと精神科病棟へ向かった桐生先生の背中をなんとも言えない表情で見つめるのは、少なからず罪悪感があるからなんだよね?
「えっ?」
受付嬢の一人が俺を避けるように体を傾けた声に反応して後ろを見た。
「隼人くん…どうしたの?」
さすがに気まずいのか、顔を引きつらせた受付嬢。
受付嬢の声に反応することなく俺を見つめる隼人くんが俺の真後ろに立っていたんだ。
あれ…、まさか一人で来たの?バスで?
ちょっと、いや…結構。痩せちゃったね。
「隼人くんどうした?桐生先生は来てること知ってる?」
今にも泣き出しそうな不安定な表情で。
「俺って………」
カタカタと唇を震わせながら。
「………誰かを刺したことあるの…?」
「え……」
それは忘れていたはず。誰かから聞いたとか?いやいや家にこもってたんだからそれはない。桐生先生が言うわけないし…。
思い出したってこと?なんで今?伝えるべき?でも、確証がないから聞いてるんだよね?なら刺してないと言うべきか、シラを切るか…。どうする…?
「………あるの?」
顔面蒼白という言葉がぴったりだ。
だめだ、知らないフリをしろ。いつもの俺ならできる。ヘラヘラ取り繕って、隼人くんを傷付けないようにしないと…。
「えっと……そんなことあったかな?悪い夢でも見た?」
傷付けないための嘘だったのに、隼人くんは思いっきり傷付いたような顔をして頭を押さえた。
「頭痛い?横になろうね」
どうするのがよかった?
君は相部屋のケントくんの顔に誤ってハサミを突き立ててしまったんだよって、真実を伝えるのが正しかった?
いいや。そんなことしてみろ。
せっかく治った精神病がぶり返すぞ。
桐生先生〜!!戻ってきて。今すぐ戻ってきて。どうしたらいいかわからないです。
とりあえず空いてる病室に入ったけど……。
心空っぽみたいな顔になっちゃってるしさ……。
……まさか。魁くんに刺された時に震えてたのって………。
あれぇ…ってことは確証があったってこと?
俺やらかしてない?シンプルに嘘つかれたことに傷付いてるの?だとしたら相当まずくない?今からでも弁解する?どうしたらいい?
もう、、ごめんなさい。俺には無理だよ。板挟みで大変なの分かってるけど俺が勝手に一人で進めるのはよくない。
「桐生先生。すみません。205号室に来られますか」
「急患か」
「いえ。隼人くんが…」
「は?隼人?分かった。すぐ行く」
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