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人間不信
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side 魁
目が覚めたら知らない病院にいて、
担当の医者がコロコロ変わる変なところ。
朝霧って奴は精神科医だからまだ分かる。でも桐生とかいう冷たい奴は心臓外科医のくせにしょっちゅう部屋にくる。
今は心臓病はそんな酷くないんだって。それなのにトイレまで外で見張るんだ。
心臓落としたりしねえから待ってんなよ。
売店でお菓子買おうと抜け出したら一瞬で見つかるし。
暇なの?あいつ。
そういえば、チビが俺を見てギャンギャン騒いでたな。
桐生の患者か?あ、でも後ろに別の人いたっけ。
あいつも精神科の患者っぽいけど元気そうだった。
もしかしてここ、誰でも精神科にぶっこんじゃう關燦よりやばい病院だったりする?
だとしたら俺ってやっぱり売られたんかな。隙を見て逃げるけど。
医者が来る前に売店行って、買えるだけの食糧を買わないと。
ドンっ…!!
「っ!」
早足で部屋を出たら思いっきり人とぶつかった。
「いってぇ。どこ見て歩いてんだよ」
ぶつかった衝撃で倒れた患者を睨む。つーかこいつ、絶対走ってただろ。
息上がってるし、そもそも歩いてただけなら倒れなくね。
「…めん……」
「ぁ?なに?聞こえない」
ゆるゆると起き上がってその場に蹲ったチビがぼそぼそと何かを言った。
「ごめんね…」
「は?別に。次から気を付ければいいたろ」
「ごめんね。ごめんね」
「だから、別にいいっつってんだろ。医者が来る前に売店行くんだよ。邪魔。早くどいて」
「ごめんね、ごめんね」
はぁ?何こいつ、精神科の患者なの?まぁ普通に考えれば、ここ精神科病棟だし?簡単に入れるところではないと思うけど。
「ごめんね、俺があのときあそこにいなければ…魁くんが加害者になることはなかったのに。俺が、俺が…」
は?
名前……ぃや…それより俺が加害者って何。
「ごめんね。迷惑かけて。ごめんね」
「お前、誰だ」
「ごめんね、魁くん」
座り込むチビの胸ぐらを掴んで顔を見た。
溢れる涙でぐちゃぐちゃな顔に見覚えがある。
『患者さんいじめちゃダメでしょ!』
「ごめんね…」
『面会しゃじぇっ…しゃじっ』
「…ごめんねぇ」
あそこでギャンギャン騒いでたチビか…?
え…でも、あの時はもっと元気そうだった。少なくともこんな気弱なイメージではなくて、どちらかというとうるさかった。…なんで、泣いてんの。なんで俺に謝るの。
俺が加害者って、何?
「お前…なんなの。なんで泣くんだよ。俺が加害者って、なんなんだよ!!」
「うぇっ…、ごめんなさい。ごめんなさい」
ついカッとなって怒鳴ったら声を上げて泣き出してしまった。
なんで、俺がいじめてるみたいじゃん。お前が変なこと言うからだろ。俺は悪くないだろ。ふざけんな。
「うぅ…ごめんなさい」
土下座するみたいに泣かれても。なんで、なんなんだよ。お前は誰なんだよ。
「…どうしました!!?」
怒鳴っちゃったから看護師が数人駆けつけてきてさ。俺が泣かせたみたいに見られてさ。
まじで。なんの恨みがあんだよ。
「隼人くん、大丈夫?お部屋戻ろうね」
隼人くん。
どっかで聞いた名前だな。
「至急桐生先生呼んで。飯窪先生でもいいから、とにかく急いで」
はっ。やっぱりこいつ、桐生の患者なんだ。あいつ心臓外科医じゃなくて精神科医なんだな。嘘つきやがって。許さねえ。
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